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第1節試合コラム『みんなでつかんだ歴史的な勝利』
8月最後の夜。秋の虫の音色を割いて、スタンドから「日野コール」が響き渡った。「ヒノ、ヒノ、ヒ~ノ」。深紅ジャージの日野レッドドルフィンズが前に前に出る。ひたむきに。
試合後、闘将のフランカー、村田毅が満足げな顔で思い出す。体を張ったのだろう、右のヒタイには大きなタンコブ。
「ファンのみなさんの声が僕らの背中を押してくれました。どっちが優勢(の展開)かわかるくらいの声援をもらった。この開幕戦に向けていい準備ができていました」
『All for One』がチームスローガンである。この開幕戦に向け、チームはしっかり準備してきた。ひとつになった。加えて、日野自動車の社員、日野市の住民も、“おらがまちのチーム”の勝利を祈った。
初めてのトップリーグの初陣はそう、簡単ではない。試合のレベルは格段に上がる。コンタクトは強く、ちょっとしたスキが命取りになる。しかも、この日の先発15人中、13人が移籍組だった。社員選手とプロ契約選手。多様な選手がまとめるのは難しい。でもひとつになれば、より大きな力となる。
細谷直監督も、村田主将も会見ではまず、試合に出なかったチームメイトに感謝した。この1週間、ノンメンバーが仮想・宗像サニックスとなり、全力でプレーしてくれた。細谷監督が言葉に実感をこめた。
「チーム全体でサニックスの戦い方を共有してくれた。Bチームのおかげで、たぶん、選手たちが試合中、この絵(シーン)は練習中に見たことがあるなと思い浮かべながらプレーできたことが大きかったと思います」
チーム結束の象徴がスクラムだった。前半中盤、日野はセンターの真ん中あたりでマイボールのスクラムを得た。8人がまとまってヒットした。当たり勝った。一気に押した。
ことし、神戸製鋼から移籍してきた2015年ラグビーワールドカップ戦士、フッカーの木津武士の言葉は安ど感にあふれていた。
「僕が日野に来た時はまだ、8人がばらばらだった。でも、開幕までには、今日のようなスクラムを組もうとやってきた。いいセットプレー(スクラム、ラインアウト)ができたのでホッとしています」
このスクラムで宗像サニックスのコラプシング(故意に崩す行為)の反則を誘った。でも、まだレフリーの笛は鳴らない。そのまま攻め込んで、ゴール前でまた相手の反則を得た。タッチライン外に蹴り出して、前半28分、右のラインアウトからフランカーのアッシュ・パーカーがインゴールになだれ込んだ。ゴールキックも決まり、10-3とした。
この日の勝因は、スクラム、ラインアウトとディフェンスである。スクラムは要所でプレッシャーを与え、ディフェンスでは、我慢して、我慢して、ラインに並ぶ人数を減らさないよう、接点で引かないよう意識が統一されていた。鋭い出足で宗像サニックスのハンドリングミスを誘った。
前半36分、自陣でのピンチながら、ディフェンスでプレッシャーをかけてハンドリングミスを誘った。そのボールにウイング小澤和人が反応し、ゴロキックにはSH橋本法史が呼応してトライを加えた。ゴールも決まり、17-3とリードを広げた。
ディフェンスでいえば、とくに2年前にパナソニックから移籍してきたCTB林泰基がよくラインを束ねた。生え抜きの小澤、新人の竹澤正祥の両ウイングは相手の破壊力あるランナーをほぼ抑えきった。勝因を聞けば、細谷直監督は「2つあります」と言った。
「1つは、前半の終盤のサニックスの20フェーズぐらいのアタックを規律を破らず、ペナルティーもせず、しっかりと対応できたこと。もう1つは、勝ち点にこだわって、最後、スクラムトライをとれたことでしょう」
リーグの順位決定には最後、勝ち点がものをいう。試合の勝ち点は勝ちが4、さらに3トライ以上獲得したチームはボーナス点1を追加することができる。
残り4分、ゴール前5㍍のスクラムを得た日野は8人が一緒にヒットし、ぐいぐい押して、スクラムトライを奪ったのである。この日3つ目。価値あるトライだった。
結局、スコアは33-3である。トライをひとつも許さなかった。確かにマン・オブ・ザ・マッチのパーカーの突破も、「陰のマン・オブ・ザ・マッチ」(細谷監督)のスクラムハーフ、橋本法史のエリアマネジメントも、途中交代出場の40歳のプロップ久富雄一のスクラムのプッシュも、称賛に値するものだった。だが、ラグビーにおいて、全員の、挑みかかる気概こそが日野の宝物なのである。
もちろん、1勝ぐらいで浮かれる余裕などはあるまい。厳しい戦いがつづく。村田主将は言った。
「すごくうれしい気持ちがある半面、次に向けて気が引き締まっている。これでトップ8を目指すと胸を張っていえる状態になった。次の試合に勝つことがまた、目標達成に近づくことになります。いい準備をしたい」
この日の試合後、日野はスーパーラグビー王者のクルセーダーズ(ニュージーランド)とのパートナーシップ締結を発表した。コーチングの協力、選手の交流、ラグビービジネスの開拓などが期待されるだろう。
チーム名が変わった。「自動車」を外し、今まで以上に日野市民と一体となってのチーム運営が推進されることになる。
細谷監督の言葉に覚悟がみえた。
「新しい歴史の中で存在感を示すことが、トップリーグがいい方向に向かっていく道しるべになればいいと思っています。おこがましいところはありますが、我々の責任は大きいのかなと」
All for One。新しい日野レッドドルフィンズの歴史がいま、はじまった。
細谷直監督コメント
本当に素晴らしい環境で、トップリーグ初の試合をさせてもらった。心から感謝したい。チーム全体でサニックスの戦い方を共有して、選手たちがプレーしたのが大きかったのかなと思います。勝ち点(5)をしっかりとれた。しかも相手をノートライに抑えた。ほんとうに選手たちを褒めたたえたいと思います。
村田毅主将コメント
こんなに待ち遠しいトップリーグは今までありませんでした。いろんな選手がいろんな思いを持って選手に臨んだと思います。そういう思いの強さがひとつになると力を出せるのかなって。(この勝利の味?)特別じゃないと言ったらウソになります。
Text by 松瀬学
試合後、闘将のフランカー、村田毅が満足げな顔で思い出す。体を張ったのだろう、右のヒタイには大きなタンコブ。
「ファンのみなさんの声が僕らの背中を押してくれました。どっちが優勢(の展開)かわかるくらいの声援をもらった。この開幕戦に向けていい準備ができていました」
『All for One』がチームスローガンである。この開幕戦に向け、チームはしっかり準備してきた。ひとつになった。加えて、日野自動車の社員、日野市の住民も、“おらがまちのチーム”の勝利を祈った。
初めてのトップリーグの初陣はそう、簡単ではない。試合のレベルは格段に上がる。コンタクトは強く、ちょっとしたスキが命取りになる。しかも、この日の先発15人中、13人が移籍組だった。社員選手とプロ契約選手。多様な選手がまとめるのは難しい。でもひとつになれば、より大きな力となる。
細谷直監督も、村田主将も会見ではまず、試合に出なかったチームメイトに感謝した。この1週間、ノンメンバーが仮想・宗像サニックスとなり、全力でプレーしてくれた。細谷監督が言葉に実感をこめた。
「チーム全体でサニックスの戦い方を共有してくれた。Bチームのおかげで、たぶん、選手たちが試合中、この絵(シーン)は練習中に見たことがあるなと思い浮かべながらプレーできたことが大きかったと思います」
チーム結束の象徴がスクラムだった。前半中盤、日野はセンターの真ん中あたりでマイボールのスクラムを得た。8人がまとまってヒットした。当たり勝った。一気に押した。
ことし、神戸製鋼から移籍してきた2015年ラグビーワールドカップ戦士、フッカーの木津武士の言葉は安ど感にあふれていた。
「僕が日野に来た時はまだ、8人がばらばらだった。でも、開幕までには、今日のようなスクラムを組もうとやってきた。いいセットプレー(スクラム、ラインアウト)ができたのでホッとしています」
このスクラムで宗像サニックスのコラプシング(故意に崩す行為)の反則を誘った。でも、まだレフリーの笛は鳴らない。そのまま攻め込んで、ゴール前でまた相手の反則を得た。タッチライン外に蹴り出して、前半28分、右のラインアウトからフランカーのアッシュ・パーカーがインゴールになだれ込んだ。ゴールキックも決まり、10-3とした。
この日の勝因は、スクラム、ラインアウトとディフェンスである。スクラムは要所でプレッシャーを与え、ディフェンスでは、我慢して、我慢して、ラインに並ぶ人数を減らさないよう、接点で引かないよう意識が統一されていた。鋭い出足で宗像サニックスのハンドリングミスを誘った。
前半36分、自陣でのピンチながら、ディフェンスでプレッシャーをかけてハンドリングミスを誘った。そのボールにウイング小澤和人が反応し、ゴロキックにはSH橋本法史が呼応してトライを加えた。ゴールも決まり、17-3とリードを広げた。
ディフェンスでいえば、とくに2年前にパナソニックから移籍してきたCTB林泰基がよくラインを束ねた。生え抜きの小澤、新人の竹澤正祥の両ウイングは相手の破壊力あるランナーをほぼ抑えきった。勝因を聞けば、細谷直監督は「2つあります」と言った。
「1つは、前半の終盤のサニックスの20フェーズぐらいのアタックを規律を破らず、ペナルティーもせず、しっかりと対応できたこと。もう1つは、勝ち点にこだわって、最後、スクラムトライをとれたことでしょう」
リーグの順位決定には最後、勝ち点がものをいう。試合の勝ち点は勝ちが4、さらに3トライ以上獲得したチームはボーナス点1を追加することができる。
残り4分、ゴール前5㍍のスクラムを得た日野は8人が一緒にヒットし、ぐいぐい押して、スクラムトライを奪ったのである。この日3つ目。価値あるトライだった。
結局、スコアは33-3である。トライをひとつも許さなかった。確かにマン・オブ・ザ・マッチのパーカーの突破も、「陰のマン・オブ・ザ・マッチ」(細谷監督)のスクラムハーフ、橋本法史のエリアマネジメントも、途中交代出場の40歳のプロップ久富雄一のスクラムのプッシュも、称賛に値するものだった。だが、ラグビーにおいて、全員の、挑みかかる気概こそが日野の宝物なのである。
もちろん、1勝ぐらいで浮かれる余裕などはあるまい。厳しい戦いがつづく。村田主将は言った。
「すごくうれしい気持ちがある半面、次に向けて気が引き締まっている。これでトップ8を目指すと胸を張っていえる状態になった。次の試合に勝つことがまた、目標達成に近づくことになります。いい準備をしたい」
この日の試合後、日野はスーパーラグビー王者のクルセーダーズ(ニュージーランド)とのパートナーシップ締結を発表した。コーチングの協力、選手の交流、ラグビービジネスの開拓などが期待されるだろう。
チーム名が変わった。「自動車」を外し、今まで以上に日野市民と一体となってのチーム運営が推進されることになる。
細谷監督の言葉に覚悟がみえた。
「新しい歴史の中で存在感を示すことが、トップリーグがいい方向に向かっていく道しるべになればいいと思っています。おこがましいところはありますが、我々の責任は大きいのかなと」
All for One。新しい日野レッドドルフィンズの歴史がいま、はじまった。
細谷直監督コメント
本当に素晴らしい環境で、トップリーグ初の試合をさせてもらった。心から感謝したい。チーム全体でサニックスの戦い方を共有して、選手たちがプレーしたのが大きかったのかなと思います。勝ち点(5)をしっかりとれた。しかも相手をノートライに抑えた。ほんとうに選手たちを褒めたたえたいと思います。
村田毅主将コメント
こんなに待ち遠しいトップリーグは今までありませんでした。いろんな選手がいろんな思いを持って選手に臨んだと思います。そういう思いの強さがひとつになると力を出せるのかなって。(この勝利の味?)特別じゃないと言ったらウソになります。
Text by 松瀬学