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インタビュー

第4節試合コラム『あぁ3連敗。もっとファミリーの結束を』

「オレたちはファミリーだ」。今季、新加入した元トンガ代表、日野レッドドルフィンズのナンバー8、36歳のニリ・ラトゥはよく、そう口にする。家族とは苦しい時こそ励まし合うものだ。結束する。けが人続出もあり、敗戦がつづく。それが今である。
 杜の都、仙台のユアテックスタジアム仙台。ふだんはサッカーJ1のべガルダ仙台の本拠として知られる。でも、この日はラグビーのトップリーグ、日野×NTTコミュニケーションズである。遠路はるばる駆け付けた日野ファンのTシャツでバックスタンドは赤く染まった。試合前から掛け声がとぶ。
 「ヒノ、ヒノ、ヒ~ノ!」
 「ゴーゴー、ドルフィンズ!」
 ただファンの熱量はチームには伝染はしなかった。前節のトヨタ自動車戦に続き、またも立ち上がりでNTTコムにやられてしまった。日野の細谷直監督が唇をかんだ。
 「ゲームの入りの悪さは絶対に繰り返さない、という話をしていました。選手もそこは意識していたはずですが、前半の20分間で4トライを取られてしまった。ここが最大の敗因だったと思います」
 どの勝負であれ、チャレンジャーの鉄則は『先手必勝』である。なのに…。悔しいではないか。相手のラインアウトからつながれて先制トライを許せば、マイボールのラインアウトのミスボール、さらにはノックオンのボールを展開されて立て続けにトライを奪われた。ラインディフェンスの乱れ、ウイングのタックルミスが重なった。
 前半18分、敵陣深く攻め込みながらミスから反撃を食らう。ディフェンス網を突破され、中盤あたりではウイング鄭演植がハンドオフではじかれた。悔しくないのか。相手を追おうともせず、ぼう然と立ち尽くした。
 救いは、相手のゴールキックの不調だった。4本ともゴールキックを失敗し、スコアはまだ、0-20だった。反撃はFWからである。PKをタッチに蹴り出し、右ラインアウトからモールをぐいぐい押し込み、ロックのアッシュ・パーカーがインゴールに躍り込んだ。やっとで1トライを返した。
 逆転のチャンスはあった。後半中盤、相手はラフプレーによるレッドカード(一発退場)、イエローカード(10分間の一時的退場)で2人を失い、日野は数的優位に立った。まさに「イケ、イケ、ヒ~ノ!」だ。
 途中出場の橋本法史がSHに入り、スタンドオフの位置にオーガスティン・プルが回り、インサイドセンターにヘイデン・クリップスが並ぶラインが機能する。ディフェンスの出足もよくなる。接点でも優位に立った。
途中から出場のナンバー8千布亮介、橋本がトライを重ね、後半28分、点差を12点に縮めた。ここが勝負所だった。「たら・れば」ながら、あと1本、畳みかけていれば…。
細谷監督も悔やんだ。
「相手(のディフェンスライン)がいない状況でキックを選択してしまって…。そういった冷静さを欠いたところも敗因のひとつでしょうか」
最後に意地は示した。ノーサイドのホーンが鳴った後のラスト・ワンプレー。自陣ゴール前のスクラムから逆襲し、ルーキーのCTB竹澤正祥が左中間に飛び込んだ。28-45で試合終了。電光掲示板は「43:18」だった。
ベンチに下がっていたラトゥ・ゲーム主将が「オレたちはギブアップしなかった」と胸を張る。
「みんなあきらめずに戦ったのはよかったと思います。ことしはトップリーグ初年度です。学ぶことはたくさんあります。あとの3試合が重要です。きょうの反省点、教訓を生かして、戦っていくつもりです」
ラトゥは2007年度から8季在籍したトップリーグのNECで主将を務めていた。その他、英国やニュージーランドのクラブチームでもプレーした。まさに「世界を旅」するリアル・リーダーである。
日野では外国人勢の兄貴分となっているそうだ。そのラトゥが「ヒノはファミリー」と強調するのだ。
「ファミリーはファミリーのために一生懸命やる。結束するのは大事なんです。とくに(日野は)外国人選手が多いので、外国人選手は日本人選手のやり方、考え方を受け入れることも必要でしょう」
では、家族の結束を強めるためには?
「もっと気持ちを強く持って、細かい事を一緒に修正していくことが結束につながっていくと思っています」
もちろん、日野ファミリーの結束を強くする一番の特効薬は『勝利』である。初陣で勝利を飾った後、3連敗となった。リーグ戦はあと3試合。神戸製鋼、NEC、サントリーと強豪がつづく。
ここはファンを含めた日野ファミリーの結束を。合言葉は「あきらめない」―。

細谷直監督 まだトップリーグは続きます。強豪相手になりますけど、我々はしっかり3つ、勝つ。あきらめません。チームがひとつになっていく。3戦全勝を目指して、しっかりとチームをつくっていきます。

ニリ・ラトゥ・ゲーム主将 ゲームの入りが悪かった。とくに最初の10分、集中しようと思っていたが、できませんでした。それが反省点です。オレたちはファミリーだと考えています。結束するのが大事なんです。これまでの反省点、教訓を生かして、これからも一緒に戦っていくつもりです。

Text by 松瀬学

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