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インタビュー

第7節試合コラム『次へのステップ。ファイトあるのみ』

 いばらの道である。トップリーグ初挑戦の日野レッドドルフィンズは格上のサントリーに挑み、ファイトし、敗れた。これでリーグ戦を1勝6敗(勝ち点6)の紅組7位で終え、9-16位決定戦に回ることになった。
確かに悔しいだろう。だが闘志の塊、フランカー佐々木隆道は試合後、充実感も漂わせていた。3年前、サントリーから移籍してきた。第1目標だったチームのトップリーグ昇格を実現し、今季もからだを張る。34歳。初勝利の初戦でのケガで戦列離脱し、7試合ぶりの試合だった。開口一番。
 「楽しかったです」
 佐々木は開始直後、猛然と倒れた相手のボールに絡み、“ジャッカル”でターンオーバーした。ボールを力と技で奪い返した。「ジャッカルの鬼」の面目躍如だった。
 ちょっぴり顔を崩し、こう続けた。
 「何ていうのか、(サントリーの)後輩たちの気持ちも伝わってきましたし、日野もこの試合に向けてすごく準備してきたところが少し出たんじゃないかと。これまでの負け方とは質が違ったんじゃないかと思います」
 何より、日野は全員が最後までファイトをし続けた。ディフェンスでは準備してきたとおり、相手のワイドラックからのアタックをしっかり止めた。前に出るディフェンス、前に出るアタック。接点では決して、後手を踏んではいなかった。
 ただ、トップリーグ上位で戦ってきたチームと、初昇格の日野との差もあった。ディシプリン(規律)であり、我慢であり、プレーの精度、とくにブレイクダウンの質だった。日野はボールを持った選手がすぐに倒れがちだったので、どうしても相手に絡まれる機会が増えた。攻めているのに、ボールを離さない「ノット・リリース・ザ・ボール」のペナルティーを何本もとられた。
 日野の細谷直監督は硬い顔つきで口を開き、「アタックのプランに関しては半分できて、半分できなかった」と言った。
 「きょうもペナルティー、とくにアタックでのペナルティーがすごく多かったと思うんです。フィジカルでやられている時はディフェンス面でのペナルティーが多い。でもきょうは恐らく、アタックでのペナルティーが半分くらい占めていたのかなと思います。それは自滅して、アタックの機会を自ら放棄していることになる。そこの精度、ブレイクダウンのところですね」
 PKは相手6本に対し、日野は16本も与えた。ペナルティーでいえば、日野はプロップのパウリアシ・マヌと新人のWTB竹澤正祥が危険なタックルで“シンビン”(一時的退場)をもらった。挑戦者が数的不利な状況になっては勝ち目がなくなる。
 それでも、日野は後半、王者から2トライを奪った。日野らしいテンポで。
後半5分、ラインアウトのこぼれ球をうまく生かし、はやいテンポの連続攻撃から、最後はクイック・ラックから右に回して、CTBオーガスティン・プルがうまくWTB竹澤につなぎ、ポスト下に駆け込んだ。さらに後半34分、ゴール前のPKから速攻を仕掛け、SH橋本法史とナンバー8千布亮輔のクロスプレーから、千布がインゴールに飛び込んだ。
 王者サントリーに追いすがるも最後はスコアが開いたが、チャレンジャーらしいひたむきなプレーに観客の支持を得た。「イケ、イケ、ヒ~ノ!」「ゴー、ゴー、ドルフィンズ!」。最後まで衰えぬ声援を受け、からだの奥から闘争心が奮い立ってきていたのではないか。
主将の村田毅は満身創痍ながらも、前を向く。言葉に力をこめた。
 「みんな、ファイトし続けたので、チームを誇りに思います」
 9-16位決定トーナメントの初戦は東芝と対戦することになった。今季、不振とはいえ、強豪である。手ごわい相手である。
 細谷監督は「チャレンジャー」と何度も繰り返した。
 「私たちは、まだまだチャレンジャーですから。ひとつでも多く勝って、ひとつでも上(の順位)を目指して、何が何でも来シーズン、トップリーグというステージで戦うんだという強い気持ちを持って、さらにチーム力を上げていきたいと思います」
 まだチームは成長過程である。自分たちがトップリーグにふさわしいチームかどうか。それが問われるトーナメントとなる。

 細谷直監督 既に下位(9-16位決定)トーナメントに回ることが決まって、非常にメンタル的には厳しい状況で臨みましたが、しっかりファイトできたと思います。選手たちが次に向かっていく上でいいステップになりました。とくにディフェンスでは感覚的にたぶん、自分たちのディフェンスを取り戻せつつあると感じてくれたと思う。そこを詰めて、全体の密度、強度を高めていきたい。

 村田毅主将 我々はもう、失うものは何もなく、この試合での態度がチームの未来が決まっていくと思って、とにかくファイトし続ける気持ちを持って戦いました。次のトーナメントでは最上位(9位)を目指して、何が足りないかということをひとりひとりが考えて、いい準備をしていきたいと思います。

Text By 松瀬学

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