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【カップ戦】第1節試合コラム『敗北に悔しさとヨロコビを見た』

 ここにも峻厳たる戦いがある。各チームの底上げを図るため、創設された「トップリーグカップ戦」。レギュラーシーズンのリーグ戦で出場機会の少なかった選手で固めた日野レッドドルフィンズだが、ひとつひとつのプレーにプライドと意地を見た。
 いや、試合への飢餓感か。ヨロコビか。試合後、ファンサービスのため、スタンドのコンコースに行ったフランカーの西村雄大は意外に明るかった。敗戦にも、火のついたタックルを連発した。悔しさ半分、力を出し切ったとの充足感半分か。
 「すごく楽しかったです」
 首のケガによる戦列離脱で、リーグ戦の試合には一度も出ていない。リハビリを堪え、ようやくプレーできるようになった。“タックル命”のプレースタイルは、つぶれた右耳をみればすぐわかる。
 「ヤッター、復帰だ!という感じでした。やっとラグビーできるよって。うちは人数多い分、試合に出られない選手が多いので。でも、そういった埋もれた選手たちも一生懸命やっているんです」
 だからだろう、日野の選手たちのプレーにはヨロコビが満ちていた。場所が、日野がトップリーグの初陣を飾った東京・町田の陸上競技場である。周りの木々はすっかり紅葉してしまったけれど、スタンドの日野ファンの熱気は相変わらずだった。
 ファンの声援を受け、日野ははやい出足のディフェンスからリズムをつくった。前に前に出る。ファイトする。サンウルブズで活躍したキヤノンのナンバー8、エドワード・カークらを鋭いタックルでつぶしていった。接点では決してひけをとっていなかった。
 細谷直監督の述懐。
 「前半は、相手が外国人5人をそろえてきたなかで、しっかりとしたディフェンス中心にからだを張って、いいゲーム運びができました。相手のミスを誘うような、組織ディフェンスを機能させることができました」
 前半20分頃、日野はWTB篠田正悟の好キックをチェースする。敵陣ゴール前のブレイクダウンでボールを奪い返した。ターンオーバーだ。闘志の塊、ナンバー8のニリ・ラトウが右に回し、SO山道翔がオープンサイドに絶妙の“キックパス”、これをWTB小沢翔平が好捕し、内側にフォローしたCTB園木邦弥にポンとクイックパス。園木がステップを切って、そのまま右中間に飛び込んだ。ビューティフルな先制トライだった。
 だが、エリアマネジメントがうまくいかず、その後は自陣のゴール前に釘付けになるシーンが増えた。前半残り4分、ラインアウトからのモールを押し込まれて、トライをもぎ取られた。後半にも相手のモールでトライを加えられた。細谷監督は「いい課題をもらいました」とポジティブにとらえた。
 「一番大事なことは、12月の(9-16位決定)トーナメントです。レベルをもっと上げていかないといけないのは、モールのディフェンスですね。そこは(初戦相手の)東芝が一番の強みとしているところですから」
 後半は、タックルが若干、甘くなった。自陣での展開が増えた。ボールを持つ機会が減ると、どうしてもペナルティーが増えてしまう。後半は相手1本に対し、日野は7本ものペナルティーを与えてしまった。これではリズムには乗れない。
 ゲーム主将のニリ・ラトウは言った。
 「前半は相手に対し、すごくいいプレッシャーを与えられていたと思う。でも、後半は逆に我々がプレッシャーを感じてしまった」
 結局、7-20でノーサイドの笛がなった。不可解な判定もあったけれど、勝つためにはまだ何かが足りないのだった。規律か、スキルか、厳しさか。
 冒頭のファンサービス。西村と一緒だったフッカーの崩光瑠は「もうちょい前でラグビーができていれば…」と悔やんだ。
 「我慢比べになったとき、自滅する感じで自陣にくぎ付けになった場面が多かった。カップ戦なので、もっとチャレンジしていっていれば…。この辺を修正していきたい」
 CTB坂本椋矢はこうだ。
 「通用できた部分はいっぱいあった。そこを80分間、継続していくことが課題です」
 カップ戦は今月、プール戦としてあと2試合が行われ、12月2日にはトップリーグ9-16位決定戦初戦の東芝戦に挑むことになる。
 今更ながら、ラグビーは人生の奥深さを教えてくれる。人はいつか、負ける。場合によっては、しょっちゅう負ける。そこでどうするか。「負けて学べるか」、生きていく上で大事なのはそこなのだ。
 スタジアムの帰り道、日野ファンの方に声をかけられた。トップイーストの時代からずっと、日野の試合を観戦しているそうだ。
 「最近は負けてばかりで…。もう、気分が沈みます」
 上のステージでの挑戦とはそういうことである。いまは試練なのだ。選手もファンも僕も。レッドドルフィンズ諸君、心温かきファンに、安堵を与える勝利を。

 細谷直監督 (カップ戦の狙いは)ひとつはチームの底上げです。試合にあまり出ていない選手にとって、プレッシャーのかかった公式戦というのは、選手たちの底上げにつながります。モールで2つトライをとられた点は課題としてしっかり修正していきたい。あとは規律の問題。次週の試合に向け、しっかりと準備していきたい。

 ニリ・ラトウ・ゲーム主将 きょうはシンプルにゲームをやろうと考えていた。前半はとくにディフェンスがよかった。後半は相手のプレッシャーを感じたのか、いくつかミスが出た。でも、いいところもあったので、前向きにとらえていきたい。

Text By 松瀬学

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