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インタビュー

【カップ戦】第2節試合コラム『勝てそうで勝てなかったからこそ、この経験を大事にしたい』

 日野レッドドルフィンズが初めて訪れる四国。その愛媛の天候は、薄雲が広まるも日差しの差し込む青空に恵まれた。前日から愛媛入りしているチームメンバーは気合も十分。バックスタンドには赤いシャツをまとった日野応援団、メインスタンドには日野自動車の役員の姿が見られる。その熱い視線の中、キックオフで敵陣深くに入り込む日野のプレーヤーたち。10番ヘイデン・クリップスが蹴り上げたボールが敵陣に入った後、相手のキックを13番片岡将がキックチャージ。その後も敵陣で戦う。惜しくも得点には結びつかなかったものの幸先はなかなかよい。12分に訪れたピンチも、佐々木隆道の身を挺したすばらしいタックルで防いだ。
 「あれは、横から大声で叫ばれたからですよ、“タカミチ、走れ~!”って」
 叫んだのは、2番HOの木津武士だという。
 「木津さんに言われたら、そりゃ走らないわけにはいかないでしょう」
 佐々木は、あの場面を問われて笑って答えた。木津は、あの南アフリカを破った2015WCメンバー。最後の逆転トライ目前のスクラムを最前列で押した一人である。
 「あそこは自分の足では止められない。だからもう、頼むしかないな、と」
 木津も笑って振り返るが、やはりそこにはベテランどうしのコミュニケーションがあった。木津は相手のボールキャリアの前にいながらも、相手がタッチライン際に走っていったので追いつけないと判断。そこで、その後ろにいた佐々木に指示を出し、自分は内側を抑えながら併走していった。一瞬の判断と、一瞬の意思の疎通。集団スポーツであるラグビーには欠かせない重要な要素だ。
 木津のコミュニケーションを称えるのは、この日1番、左プロップで木津と共にスクラムを支えたパウリアシ・マヌ。
 「スクラムのリーダーだからね。うまくリードしてくれるからとてもやりやすいよ。今日は特によかったでしょ」
 マヌの言うように、この日のスクラムは最初から相手を圧倒していた。ファーストスクラムはボール投入前に押してしまいフリーキックの反則となってしまうが、木津も「最初に組んでみて、今日は行けるなと思った」と言う。
先の佐々木の好タックルから相手ノックオンを誘った後のマイボールスクラム。日野のフォワードは相手を押し込み、相手1番がたまらず内側に入り込んでこの日2度目のスクラムでのペナルティ。その後のスクラムでも相手に勝ってPKを得た。
 そして圧巻は30分を過ぎに迎えた、バックスタンド側、ハーフウェイラインと自陣側10mのちょうそ中間で得たマイボールスクラム。それは、19分の佐々木のトライ(ゴール)の後、パナソニックの2つのPGから7対6と迫られていた後のスクラムだった。
 SHの9番橋本法史がボールを投入した直後、日野のスクラムは押す、押す、押す。レフリーは日野にアドバンテージの腕を上げ、バックスタンドからは大きな歓声が沸く。そのまま5メートル前進し、ボールがハーフウェイを超えた直後、橋本がボールをパスアウト。素早い連続攻撃から、15番ギリース・カカがオフロードパス(タックルをされながらのパス)で、7番佐々木にボールに渡す。ボールを持った佐々木は迫る相手ウィングの裏にキックすると、それがワンバウンドで見事に13番に入り、そのままインゴールで押さえてトライとした。
 後半も、日野は開始早々4分に負傷した11番松井佑太に変わって入っていた23番モモセ・トンガがトライ(ゴール)を決めて21対6とリードを広げた。
 それでも日野は勝てなかった。
 パナソニックは、後半7分、11分と立て続けにトライ(ゴール)。21対20と1点差に迫る。
ラグビーにおいては、1点差などリードのうちには入らない。日野は、勝利に近づくため、再三相手ゴール前に迫るも得点に結びつかない。
 そして31分。ついにパナソニックは逆転のトライ。ゴールも決めて21対27と6点差。6点差ならワントライ、ワンゴールで逆転できる範囲。それでも日野は追加点を上げられず、逆に39分には反則から相手にとどめのペナルティーゴールを決められた。そのきっかけは、相手陣でのスクラムから。それまで勝っていたスクラムでミスが出たのだ。1番マヌ、2番木津も含め、フロントローは全員入替え。すでに相手のフロントローも全員が入れ替わっていた。終わってみれば21対30。
 細谷監督は「大事なところで我慢できない。相手とはそこの差」だと言う。チャンスは何度かあったはずだ。それでも、先制しながらもわずか1点差に迫られた焦りからなのか、相手のインゴールへ入ることができない。逆に言えば、パナソニックはそこに“我慢強さ”がある。
 「自分たちの得意な形からはみ出てしまった感じ」と言うのは、この日大活躍した佐々木隆道。
 「やはり、焦りから自分たちの持ってる力が出せない。ただ、それもこれも、次への成長過程でしょう。1試合ごと、勝っても負けてもすべてが日野の未来のためですから」
 ラグビーには、体格、体力、そしてそれぞれのスキルも必要。チーム戦略も重要になってくる。だが、試合での経験、特にピンチやチャンスの時にいかに自分たちの力を出し切れるかというのは、経験によるところも大きい。そして、その経験の積み重ねこそが、プレーヤー間の大事なところでのコミュニケーションを生むのだろう。
 勝てそうで勝てなかったこの日の試合。この敗戦を、次へにいかに生かせるか。日野の未来への戦いはまだまだ続く。

 細谷直監督 前半の入りから、トライの取り方はよかった。でも、後半途中から全く別のチームになってしまいました。大事なところで我慢しきれなくて、ペナルティを犯してしまう。サントリー戦でできなかったことを、前回のキヤノン戦でなんとか修正できたのですが、やはりそこが課題。次のNECでもそこが大事だと思うでの、もう一度修正していきます。

 村田毅主将 勝ち切れなった試合でした。残念です。僕ら自身でチャンスを逃した感じがあります。後半、キツイ時間帯で守れない。我慢しきれなかった。どういう状況でそうなるのか、何が必要なのか。ある意味では自分たちの課題が確認できた試合だったと思うので、次の試合、その後のトーナメントに向けてレベルを上げていきたいと思います。

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