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インタビュー

【カップ戦】第3節試合コラム『ファンの声援も空しく…この屈辱を糧に』

 秋晴れの下、リニューアルされた熊谷ラグビー場が泣いていた。
 バックスタンドを、日野レッドドルフィンズファンのTシャツ姿が赤く染めている。惨敗。日野の細谷直監督の声は沈んでいた。
 「ワールドレベルのスタジアムで試合を迎えられ、関係者に感謝を申し上げたい。それにふさわしい試合をしないといけなかったんですけど…。今日は完全に力負けでした」
 この新設されたカップ戦。各チームの思惑がずれることがある。試合出場の少ない選手の「育成の場」とするのか、レギュラー陣の強化として「勝負の場」とするのか。日野は前者を、対するNECは後者だった。そうなると、いわゆる“ミスマッチ”となる危険が生じる。ワンサイドとなった。
 それでも、日野応援団は声を枯らした。おおきな声援が北風に乗った。
 「イケ、イケ、ヒーノ!」
 「ヒノ、ヒノ、ヒーノ!」
 もちろん、日野の選手たちの耳にも届いていたはずだ。ファイトする。序盤の前に出るタックル、とくに自陣ゴール前ディフェンスには心を揺さぶられた。たとえばフランカーの新井信善、藤田哲啓、ウイングの中園真司、フルバック小川優輔…。
 だが、警戒していたスクラムから崩された。ファーストスクラムでコラプシング(故意に崩す行為)の反則をとられ、チーム全体が精神的なダメージを受けた。不運が重なる。スクラムを支えるプロップの廣瀬賢一、金光植、中村和史が相次いで、けがをして退場に追い込まれた。不安が増幅する。
 ラグビーのスクラムにおいては、屈強なプロップ陣がいなくなると危険を避けるため、互いにヒットも押し合いもしない「ノーコンテストスクラム」となる。この際、負傷退場した交代選手は認められず、つまりは14人で戦わざるをえなくなる。
 加えて、日野は後半の中盤、ロックのジョエル・エバーソンが危険なプレーでレッドカード(一発退場)をもらってしまった。13人という「非常事態」に陥った。もう、組織ディフェンスも何もない。チームとして機能しなくなった。
 NECは、強力な外国勢を突破役とし、人がいるのに無人のごとき防御線を笑みを浮かべながら破った。計11トライ。細谷監督は言葉を足した。
 「チームとして、15人のまとまり感が出ないままゲームが終わってしまった」
 それでも、選手たちは必死だった。少ないけれど、トライチャンスは何度かあった。とくに前半のラスト10分。相手がシンビンで一人減り、数的優位に立った時間帯だ。
 でも、ゴールラインを割ることができなかった。こういう時こそ、シンプルにいけばいいのに、判断がぶれた。おそらく、練習とは違うオプションを選んだのではないか。
 なぜ、ノートライ? ゲームキャプテンのスタンドオフ染山茂範は漏らした。
 「エリアもボールもとれてなかった。自分らのミスで(ゴール前に)くぎ付けになって…。外にスペースがあるのはわかっていたんですけど、そこにボールをうまく運べませんでした」
 前半の終盤の数的優位の時間帯は?
 「相手が7枚(7人)だったので、自信を持ってスクラムを押していこうと話したんですが、押せなくて…」
 残念ながら、誤算が続き、チャンスを生かせなかった。フィジカル、スキル不足だけでなく、対応力、我慢、規律…。ラグビーは人生を教えてくれる。
 そういえば、試合後の記者会見の冒頭、こんなことがあった。ラグビー協会の司会者が監督、ゲーム主将紹介の際、「では、ソメヤ監督からどうぞ」と間違った。
 細谷監督は紳士だった。戸惑いながらも、ジョークで司会者を救った。
「いえいえ、染山(そめやま)と細谷(ほそや)です。ふたりで一人前ということで…」
 この試合の屈辱も後悔も、選手の成長につながれば、あるいは次の順位決定トーナメント初戦の東芝戦に勝てば、良き糧となりうる。12月2日の日曜日、同じく熊谷ラグビー場。勝負のポイントは、スクラムとモールディフェンスとみる。
 辛抱強い、心優しき日野ファンに勝利を。
 つぎこそは。

細谷直監督 今日のフォーカスは、まず相手のスクラムを止めることでした。でも、最初のスクラムからペナルティーをとられて…。全体的に受けに回ってしまったのかな。今度のゲーム(東芝戦)が大事な試合となる。しっかり準備していきたい。

染山茂範ゲームキャプテン 試合の入りから受けてしまって。NECの強みである外国人選手を止めきれずにこういう結果になってしまった。非常に残念です。でも下を向かずに、選手一人ひとりが何ができるかを考えて、この一週間、練習に取り組んでいきたい。

TEXT BY 松瀬学

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