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トップリーグ 順位決定2回戦コラム『トップリーグ残留目指し、大きな一勝をもぎとる』
難産ゆえの陣痛か。トップリーグでひとつ、勝つのは難儀である。開幕戦は勢いで勝ったようなものだけれども、下位順位決定トーナメントに回った日野ドルフィンズはこの日は地力と執念で粘り勝ちした。カップ戦を含めると、じつに11試合ぶりの勝利だった。
真冬並みの寒さの北九州のスタジアムである。終盤。天気がミゾレからヒョウに変わっていく。一時、18点あったリードも見る間に減っていく。ラスト3分。ちょうどコカ・コーラ陣の奥には電光掲示板が見えていた。主将の村田毅は苦笑しながら思い出す。「40-36」、わずか4点差を示していた。
「どんどん相手のスコアが変わっていくのは、心臓に悪かったですね。でも、まあ、みんなのやることがひとつに向いていたので…。そこに対する不安はなかったです」
“そこ”とは、マインドだろう。互いの信頼、結束、勝利に向けた執念、あるいは戦い挑む気概といったものだろう。こういう時、一人でも弱気になったら勝負は逆転する。
敵陣ゴール前で日野はマイボールのスクラムを押した。ごりごり押した。相手のコラプシング(故意に崩す行為)で反則をもらった。ペナルティーゴール(PG)を蹴り込んで7点差にひろげるか、あるいはタッチに蹴り出してラインアウトに持ち込むかと思っていたら、村田主将は再び、スクラムを選択した。
同主将が説明する。
「フッカーとコミュニケーションをとったら、“いける”ということだったので、信頼して(スクラムを)選択しました。一度、ペナルティーをとれた部分はあったけど、最終的には向こうにもペナルティーをとられてしまった。あそこの判断(の是非)はもう一回、考えてみたいと思います」
救いは、この日、意思統一されていた前に出るタックルである。相手がPKから速攻をしかける。左に回す。圧力をかけ続けていたからだろう、相手のSOがボールをぽろりと落とした。助かった。赤いTシャツを着たバックスタンドの日野応援団、メインスタンドの日野自動車の下義生社長ら役員たちの顔にも安ど感がひろがった。
マイボールスクラムから、途中から代わったSO山道翔がボールをタッチに蹴り出して、ノーサイドになった。勝った。やっと勝った。目下10連敗だった。真っ暗なトンネルにぱっと希望の光がみえたようなものである。
ゲームマネジメントや戦術の選択同様、主将のPKの選択は難しい。結果として、判断がうまくいったのは、前半終了間際のPKだった。その時、スコアは21―10。定石通りなら、PGを追加して、14点差で前半を折り返すところだった。だが、相手がシンビン(10分間の一時退場)で一人少なかったこともあり、経験値の高いCTBオーガスティン・プルが「ラストワンプレーだけど、トライを狙いにいこう」と訴えたのだった。
そのラインアウトからサインプレーで、ボールを投じたフッカーの木津武士がライン際を走った。ラインを踏んだらタッチとなる。右手でボールをインゴールに抑えたが、TMO(テレビジョンマッチオフィシャル)による映像判定となった。
木津の述懐。
「僕は全然、タッチラインとかを意識せずに走ったんです。TMOになったから、“ウソやろう”って。トライにならなかったら、やばかったですよ」
木津にとって、以前所属していた神戸製鋼時代とは、1勝の重みがちがう。「うれしさもちがう」と漏らした。
「神鋼では当たり前の勝利でも、このチームでは、なかなか勝てず、成長している最中ですから。最後はひやひやしましたけれど、勝ち切れたのは大きいですね」
成長過程のチーム特有なのだろう、やはり日野は強さと脆さをあわせ持つ。スクラム、ラインアウト、接点は安定していただが、80分間、戦うフィジカルを持続できない。日野の生命線ともいえるブレイクダウンにしても、一人目はともかく、ふたり目のファイトが前半、後半で少し変わった。
そうはいっても、勝ちは勝ちである。一昨年度シーズンのトップリーグ入れ替え戦で敗れたコカ・コーラを下したのである。チーム力は間違いなく、上がっている。
要は、80分間、日野のラグビーを実践できるかどうか、である。日野のラグビーとは安定したセットプレー、激しいブレイクダウン、接点でのファイトである。連携して前にでる鋭いディフェンスである。
この順位決定戦は所詮、トップリーグ下位の順位が決まるだけじゃないの、と軽く見るなかれ。トップリーグ入れ替え戦を考えると、13位から16位の順位の変動は相手(トップチャレンジリーグ上位)のチーム力が大きく変わってくるのだ。だから一つでも上位に。
その意味で、15日(土)の順位決定最終戦(13位・14位決定戦)はより大事である。相手が、トップリーグ初戦で快勝した宗像サニックスである。油断大敵。あの時とは宗像のチーム力は違う。別チームといってもいい。
ベテランのフランカー佐々木隆道は「しっかり勝ち切って、日野としての新しい歴史をつくっていく」と言い切った。
細谷直監督は記者会見後、ボソッと漏らした。「もう死ぬ気でいきます」
ポイントは規律(ディシプリン)とセットプレー、前にでるディフェンス。団結、そして挑みかかる気概である。
トップリーグ残留を目指し、日野の陣痛はまだ、つづく。
細谷直監督 勝てたことがまず、よかったところです。執念では相手を上回った。ギアをトップにいれる時、選手間でタイミングにはまだ、ばらばら感がある。そこを付け込まれたら、チームのコネクションが寸断される。課題をしっかりもらったので、次の試合に向けてしっかり準備していきたい。
村田毅主将 勝って反省できるのは幸せだなと思います。アウエーにも関わらず、観客席を埋めていただいたファン、応援してくれたみなさんに感謝したい。次の試合の勝ち負けは大きいというのは、チームみんなが感じているところです。次の試合、そして入れ替え戦にも勝って、何としてもトップリーグに残ります。
TEXT BY 松瀬学
真冬並みの寒さの北九州のスタジアムである。終盤。天気がミゾレからヒョウに変わっていく。一時、18点あったリードも見る間に減っていく。ラスト3分。ちょうどコカ・コーラ陣の奥には電光掲示板が見えていた。主将の村田毅は苦笑しながら思い出す。「40-36」、わずか4点差を示していた。
「どんどん相手のスコアが変わっていくのは、心臓に悪かったですね。でも、まあ、みんなのやることがひとつに向いていたので…。そこに対する不安はなかったです」
“そこ”とは、マインドだろう。互いの信頼、結束、勝利に向けた執念、あるいは戦い挑む気概といったものだろう。こういう時、一人でも弱気になったら勝負は逆転する。
敵陣ゴール前で日野はマイボールのスクラムを押した。ごりごり押した。相手のコラプシング(故意に崩す行為)で反則をもらった。ペナルティーゴール(PG)を蹴り込んで7点差にひろげるか、あるいはタッチに蹴り出してラインアウトに持ち込むかと思っていたら、村田主将は再び、スクラムを選択した。
同主将が説明する。
「フッカーとコミュニケーションをとったら、“いける”ということだったので、信頼して(スクラムを)選択しました。一度、ペナルティーをとれた部分はあったけど、最終的には向こうにもペナルティーをとられてしまった。あそこの判断(の是非)はもう一回、考えてみたいと思います」
救いは、この日、意思統一されていた前に出るタックルである。相手がPKから速攻をしかける。左に回す。圧力をかけ続けていたからだろう、相手のSOがボールをぽろりと落とした。助かった。赤いTシャツを着たバックスタンドの日野応援団、メインスタンドの日野自動車の下義生社長ら役員たちの顔にも安ど感がひろがった。
マイボールスクラムから、途中から代わったSO山道翔がボールをタッチに蹴り出して、ノーサイドになった。勝った。やっと勝った。目下10連敗だった。真っ暗なトンネルにぱっと希望の光がみえたようなものである。
ゲームマネジメントや戦術の選択同様、主将のPKの選択は難しい。結果として、判断がうまくいったのは、前半終了間際のPKだった。その時、スコアは21―10。定石通りなら、PGを追加して、14点差で前半を折り返すところだった。だが、相手がシンビン(10分間の一時退場)で一人少なかったこともあり、経験値の高いCTBオーガスティン・プルが「ラストワンプレーだけど、トライを狙いにいこう」と訴えたのだった。
そのラインアウトからサインプレーで、ボールを投じたフッカーの木津武士がライン際を走った。ラインを踏んだらタッチとなる。右手でボールをインゴールに抑えたが、TMO(テレビジョンマッチオフィシャル)による映像判定となった。
木津の述懐。
「僕は全然、タッチラインとかを意識せずに走ったんです。TMOになったから、“ウソやろう”って。トライにならなかったら、やばかったですよ」
木津にとって、以前所属していた神戸製鋼時代とは、1勝の重みがちがう。「うれしさもちがう」と漏らした。
「神鋼では当たり前の勝利でも、このチームでは、なかなか勝てず、成長している最中ですから。最後はひやひやしましたけれど、勝ち切れたのは大きいですね」
成長過程のチーム特有なのだろう、やはり日野は強さと脆さをあわせ持つ。スクラム、ラインアウト、接点は安定していただが、80分間、戦うフィジカルを持続できない。日野の生命線ともいえるブレイクダウンにしても、一人目はともかく、ふたり目のファイトが前半、後半で少し変わった。
そうはいっても、勝ちは勝ちである。一昨年度シーズンのトップリーグ入れ替え戦で敗れたコカ・コーラを下したのである。チーム力は間違いなく、上がっている。
要は、80分間、日野のラグビーを実践できるかどうか、である。日野のラグビーとは安定したセットプレー、激しいブレイクダウン、接点でのファイトである。連携して前にでる鋭いディフェンスである。
この順位決定戦は所詮、トップリーグ下位の順位が決まるだけじゃないの、と軽く見るなかれ。トップリーグ入れ替え戦を考えると、13位から16位の順位の変動は相手(トップチャレンジリーグ上位)のチーム力が大きく変わってくるのだ。だから一つでも上位に。
その意味で、15日(土)の順位決定最終戦(13位・14位決定戦)はより大事である。相手が、トップリーグ初戦で快勝した宗像サニックスである。油断大敵。あの時とは宗像のチーム力は違う。別チームといってもいい。
ベテランのフランカー佐々木隆道は「しっかり勝ち切って、日野としての新しい歴史をつくっていく」と言い切った。
細谷直監督は記者会見後、ボソッと漏らした。「もう死ぬ気でいきます」
ポイントは規律(ディシプリン)とセットプレー、前にでるディフェンス。団結、そして挑みかかる気概である。
トップリーグ残留を目指し、日野の陣痛はまだ、つづく。
細谷直監督 勝てたことがまず、よかったところです。執念では相手を上回った。ギアをトップにいれる時、選手間でタイミングにはまだ、ばらばら感がある。そこを付け込まれたら、チームのコネクションが寸断される。課題をしっかりもらったので、次の試合に向けてしっかり準備していきたい。
村田毅主将 勝って反省できるのは幸せだなと思います。アウエーにも関わらず、観客席を埋めていただいたファン、応援してくれたみなさんに感謝したい。次の試合の勝ち負けは大きいというのは、チームみんなが感じているところです。次の試合、そして入れ替え戦にも勝って、何としてもトップリーグに残ります。
TEXT BY 松瀬学