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インタビュー

ジャパントップリーグ入替戦コラム『チームの成長をみた』

 チームの強さは人間力である。いい男が集まるとチームは魅力を増す。ノーサイド。からだを張り続けた日野レッドドルフィンズの選手たちが喜びを爆発させた。
 ことしチームに移籍してきたフッカー木津武士が、チーム3年目のフランカー佐々木隆道と肩を抱き合う。移籍2年目のロック村田毅主将も、この日が31歳の誕生日のプロップ、パウリアシ・マヌも、鋭利するどいランを見せた新人のウイング竹澤正祥も顔をくしゃくしゃにした。猛タックルを浴びせ続けたオーガスティン・プルは芝にひざを付き、しばし左手で顔を覆っていた。日野ファンのTシャツで赤く染まったスタンドも歓喜の渦だ。
 途中交代した40歳プロップのいぶし銀、久富雄一もベンチから飛び出てきた。試合中に負ったヒタイの5㌢ほどの裂傷から血がにじんでいる。でも痛みはへっちゃらだ。
 「試合に出られなかった部員や、スタンドのファンの人もワアーと喜ぶじゃないですか。あれを見ると、もううれしくて、うれしくて」
 同感である。勝てなくても、ずっと応援し続けてくれたファンなのだ。古豪近鉄との決闘における勝利の味は格別だろう。
 2年連続のトップリーグ入れ替え戦ながら、意味合いは昨季とはまったく違った。昨季はトップチャレンジ2位としてNTTドコモを勢いで倒したが、今季はTL昇格1年目のチームとしてプライドをかけてTL残留をめざした。いわば守る立場だ。絶対、勝たなければいけない重圧があっただろう。
 しかも、前週の宗像サニックス戦はノーサイド寸前の逆転負けを喫していた。村田主将は記者会見で「不安やコワさ、緊張があった」と打ち明けた。それに打ち勝った。
 「僕らはまだ、追われる立場ではないと自覚して、今回、チャレンジャーのつもりで試合に臨みました。近鉄さんがやってくることに対して、100%準備して、“ここで勝とう”といったところを最後まで我慢してやり切れたことが勝因だと思います」
 ここで勝とうと意志統一したところは、①コンタクトプレー②セットプレー(スクラム、ラインアウト)③我慢―の3点だった。フィジカルの強い近鉄に対し、まずは接点でファイトする、当たり勝つ。80分間を通し、選手たちから挑みかかる気概が伝わってきた。ひたむきさ、そのラグビーの美徳のような何かを、日野の選手たちは表現した。
 スクラムは赤い塊となって押した。モールも押した。近鉄の元日本代表、トンプソン・ルークにも束になって対抗した。スタンドオフ染山茂範のキックも効果的だった。ワイドのディフェンスもよく整備され、突破力ある外国人選手を並べたバックスに簡単にはゲインを許さなかった。
 分析、準備がうまくいったのだろう。前半、ラインアウトのサインプレーで2つ、見事なトライを奪った(詳しくは速報リポートをご参照ください)。これは箕内拓郎FWコーチが練りに練ったスペシャルサインだった。
 要は、監督、コーチ、分析スタッフ、ノンメンバー、いろんな人たちの努力と情熱が勝利に結実したのである。そういえば、21-6とリードしていた後半30分あたり、村田主将は大声で周りに檄をこう、飛ばしていた。
 「あと10分! みんなの顔を見ろ! あと10分! みんなの顔を見るんだ!」
 会見で、そのココロを聞いた。村田主将は少し照れながら説明してくれた。
 「試合前から、“たくさんのノン・メンバーが見ている中で、出ているメンバーは恥ずかしいプレーをしてはいけない”と言っていたんです。だから、しんどい時こそ、ノンメンバーの顔を見たら、自分のやらなければいけないことがわかるだろうって。そんなメッセージを込めていました」
 直近の過去2試合、コカ・コーラ戦も、宗像サニックス戦も、ラストに猛反撃をくらった。この日も後半35分に近鉄にトライを返され、21-10と追い上げられた。でも、ここでふんばった。我慢した。
 村田主将は「過去2試合、最後の10分で地獄を見たので」とわらった。
 「その経験があったので、今日の試合は勝てたのだと思います」
 苦労人の主将はいつも、ファンへの感謝を忘れない。30歳がしみじみと漏らした。
 「きょうグラウンドに入った瞬間に左側(バックスタンド)が真っ赤に染まっていて…。たくさんの人が応援に来てくれるって、ほんとにありがたいなと。チームに関わってくれた方に感謝したいと思います」
 試合後、ピッチの隅では日野レッドドルフィンズの円陣があった。ノン・メンバーもスタッフも一緒だ。日野自動車の市橋保彦会長、下義生社長のねぎらいの言葉がつづく。村田主将は来季に向け、こう言った。
 「もっと上に行くためには、春から厳しくやっていかないといけない。ことしのスタンダードを塗り変えていかないといけない。もっと苦しいことをしたら、もっといい景色が見えるから。強いチームになっていこう」
 もう入替戦はごめんだ。この経験を宝とし、来季はもっと上にいこう。ふだんの鍛錬から、ひたむきに、ただひたむきに。トントントントン♪ ヒノのニトン♪。チーム一丸で。チームの成長を感じる、そんな光景だった。

 細谷直監督 試合前のコワさに打ち勝った選手はすごかった。勇気をもって、規律をまもって、80分間、やり切ったのは大きな財産だと思います。来年もトップリーグでプレーする権利をもらえたということは素晴らしいシーズンだったと思います。今シーズンはすごく長く感じた。疲れました。

 村田毅主将 昇格1年目のシーズンで自信を持てた部分で言うと、セットプレーのところでしょうか。でも、やっぱり我慢強さが足りなかった。みんなのベクトルがひとつになっていないとチームとしてはうまく回らない。だれもこれで満足している選手はいないと思います。選手一人ひとりがことしの努力をはるかに超えてやっていかないと、もっと上を目指すことはできません。僕らはまだまだ弱いんだと認識して、来年はもっと厳しくやっていきたいと思います。

 Text By 松瀬学

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