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トップリーグカップ戦 総合順位決定トーナメント2回戦コラム『記念すべきトップリーグ初参戦のシーズンを締めくくる試合。それは未来への第一歩だ』
大阪ヤンマースタジアムで迎えた「カップ戦」の最終戦。対するのは因縁の相手とでも言うべきサニックスブルース。日野レッドドルフィンズが記念すべきトップリーグ公式戦緒戦で勝利、一方でリーグ戦順位決定戦で、悪夢のロスタイム逆転負けを喫した相手である。
だがこの日はカップ戦。通常のリーグ戦にくらべ出場メンバーの“しばり”が緩いため、細谷監督が言う「若手やこれまで出場機会の少ない選手を主に」したメンバー構成である。
「特に初出場の真田(裕継/FL)や、経験の少ない園木(邦弥/CTB)がどれだけできるか。そこを見てみたい」
そんな期待もかかる試合のキックオフはサニックスから。まず蹴られたボールを受けたのは、この日のゲームキャプテンであり、母国トンガの代表キャプテンも務めた大ベテランのNO8ニリ・ラトゥ。ニリはボールを持って、一人、二人と激しく当たりながら前進。その後攻めるサニックスに対し、6番FL真田が激しいタックル! そして7番FL李淳也がボールに絡む。ベテラン、若手で組まれたFW第三列が開始早々に活躍をみせる。但しその後試合は一進一退。互いにキックを多用しながら相手陣に攻めいるもノックオン等があり決定的なチャンスは作れず0対0のまま試合は進む。前半だけで互いのハンドリングエラー5つずつとは、やはりフレッシュなメンバーとまだ慣れぬチーム編成のためか。
この日、細谷監督が警戒していたのはサニックスのバックスライン。特に、前回のラグビーワールドカップで南アを相手に逆転トライを決めたカーン・ヘスケスを中心に、12番から15番までの4人は全員南半球出身の外国人プレーヤーでいずれもが30歳を超えたベテランだ。
日野のテクニカルコーチ後藤翔太が言う。
「デイフェンス時にどうしてもエラーは出るでしょう。完璧に止めてノートライで終えるのは難しい。なので、相手にボールを回されトライを取られてしまうのはある意味想定内。あとは相手の弱点を突いて、それ以上のトライを取れるかの勝負です」
この日、相手BKと対峙し若手CTB園木とコンビを組んだのは、パナソニックワイルドナイツから移籍してきて2年目の林泰基。
「相手が誰であれ、自分にとっては関係ありませんので。ただ、今日は自分ができることをやっただけです」
何度かサニックスのバックス陣がボールを持ってゲインをするも、林をはじめ、身体を張りながら得点を許さない日野のディフェンス。互いの意地の張り合いである。
が、無得点の攻防の中での初トライは意外な形からであった。
前半27分。自陣ゴール前ショートラインアウト(3名のみ並ぶ)から、NO8ニリがラインアウトの後方でボールをキャッチ、そこでいったんラックを作った。そこから改めてキックを蹴ろうとする戦法だ。が、SO山道翔が蹴ったボールを相手NO8がチャージ! 周りから「オフサイド!」の声も響き、一瞬動きが止まったように見えるプレーヤーたち。直後チャージされたボールをサニックスFLがキャッチし、そのまま倒れるようにインゴールへ。すかさずレフリーはトライを認める笛を吹いた。ゴールも決まり0対7。チャージされたボールの軌道に恵まれなかったのか、その後の反応の遅さが悪いのか。いずれにせよ得点されたことは認めなければならず、立て直さなければない。
が、日野は直後にもトライを許してしまう。日野のリスタートキックから相手陣22m付近で相手ボールのラック。ボールがラックから出ていたと見て飛び出した日野選手がオフサイドを宣せられる。直後、そばにいたヘスケスがクイックタップからしかけて前進、FW、BK合わせてパスを6回つないで70m以上を走られ、最後はSHにインゴールに飛び込まれてしまう。さらには0対14とされたその後の日野のリスタートキックキックからも、相手陣22m内からまたしてもヘスケスを中心に全員が走ってはパス、走ってはパスとボールを運ばれ、最後はボールをもらったロックがインゴールに飛び込んだ。その間つながれたパスは13回。決まれば屈辱のノーホイッスルトライである。前半、守りに守り続けていたディフェンスの壁が壊れたのか? このまま先週のコーラ戦と同じく大敗を喫するのか?
だが、コーナーポスト付近に飛び込んだトライに対しレフリーはTMOを要請。すると結果は相手のインゴールノックオンに。インゴールに飛び込むロックに絡みつき、ノックオンを誘ったのはNO8。悪い流れが来そうなところを断ち切ったのが大ベテランのニリだったのだ。
さらにはその流れを引き寄せるように、前半終了間際の39分に日野は敵陣ゴール前でのラインアウトモールからトライ。最後にボールをインゴールに着けたのもニリである。
その流れは後半も続く。キックオフから敵陣に入った日野は相手ボールのラックから、細谷監督に注目される中、6番FL真田の激しいカウンターラックからターンオーバー。その後ほとんどボールを支配しながら敵陣に居座り、9分にはまたしてもニリがインゴールに飛び込みトライ。
しかしこのトライは単にニリの力によるだけではない。敵陣ゴール前正面、10メートル辺りのマイボールスクラムから一端右に出たボールを、SH田川明洋が、逆サイドに立つSO山道にロングパス。そのボールが山道からCTB12番・林とクロスしながら入ってきた13番・園木に渡りゲイン。一度はタックルされながらも園木はボールを置いてすぐさま立ち上がりさらにゲインしてラック。今度はそこにFL真田が外側から良い角度でボールを受けてはブレイク、ゴール前1mまで迫ったのだ。そして、直後にNO8ニリがボールを拾ってインゴールにねじ込んでトライ! ゴールも決まって14対14の同点となった。若手とベテランが、つまりはチームがひとつとなった一連の流れであった。
試合はその後サニックスFBに走り切られてがトライを奪われ、最終的には19対14で敗戦となるも、この日は観客席から試合を見つめていたチームのキャプテン村田毅が言った。
「これでカップ戦は16位。記録としてはそう記されるでしょう。でも、今日の試合メンバーが80分間身体を張り続けたプレーは、目の前で見ている人の目に焼き付いているはず。ニリの素晴らしいリーダーシップ。それに応えた他のメンバーたち。きっと今日の試合は来年度につながるものだと思います」
日野レッドドルフィンズが初めて挑んだトップリーグでの戦いはすべてが終わった。この試合を最後にチームを去るメンバーもいる。しかも敗戦。それでもこの試合は、未来への大きな一歩となるに違いない。
細谷直監督 カップ戦は、若手やこれまで出場機会の少ない選手を主に使って挑んできました。ただゲームプランに関しては他のリーグ戦と特に変わりません。つまり、来年トップリーグで戦う上で、どこまで若手が力を発揮してくれるか。試合の勝敗という意味ではみな悔しい思いをしたかと思いますが、この敗戦が来年に向けて振り返る機会になると思います。
ニリ・ラトゥ ゲームキャプテン 今日は今年のチームの最後の試合。若いメンバーが多い中で、彼らはいいパフォーマンスをしてくれました。試合は負けましたけど、プレーヤーにとって、特に若手にとってはそういう体験は宿命でしょう。今日の試合に挑んだメンバーは、誇りを持って顔を上げて帰っていいはず。あとはこの経験を生かして成長していければよいと思います。
だがこの日はカップ戦。通常のリーグ戦にくらべ出場メンバーの“しばり”が緩いため、細谷監督が言う「若手やこれまで出場機会の少ない選手を主に」したメンバー構成である。
「特に初出場の真田(裕継/FL)や、経験の少ない園木(邦弥/CTB)がどれだけできるか。そこを見てみたい」
そんな期待もかかる試合のキックオフはサニックスから。まず蹴られたボールを受けたのは、この日のゲームキャプテンであり、母国トンガの代表キャプテンも務めた大ベテランのNO8ニリ・ラトゥ。ニリはボールを持って、一人、二人と激しく当たりながら前進。その後攻めるサニックスに対し、6番FL真田が激しいタックル! そして7番FL李淳也がボールに絡む。ベテラン、若手で組まれたFW第三列が開始早々に活躍をみせる。但しその後試合は一進一退。互いにキックを多用しながら相手陣に攻めいるもノックオン等があり決定的なチャンスは作れず0対0のまま試合は進む。前半だけで互いのハンドリングエラー5つずつとは、やはりフレッシュなメンバーとまだ慣れぬチーム編成のためか。
この日、細谷監督が警戒していたのはサニックスのバックスライン。特に、前回のラグビーワールドカップで南アを相手に逆転トライを決めたカーン・ヘスケスを中心に、12番から15番までの4人は全員南半球出身の外国人プレーヤーでいずれもが30歳を超えたベテランだ。
日野のテクニカルコーチ後藤翔太が言う。
「デイフェンス時にどうしてもエラーは出るでしょう。完璧に止めてノートライで終えるのは難しい。なので、相手にボールを回されトライを取られてしまうのはある意味想定内。あとは相手の弱点を突いて、それ以上のトライを取れるかの勝負です」
この日、相手BKと対峙し若手CTB園木とコンビを組んだのは、パナソニックワイルドナイツから移籍してきて2年目の林泰基。
「相手が誰であれ、自分にとっては関係ありませんので。ただ、今日は自分ができることをやっただけです」
何度かサニックスのバックス陣がボールを持ってゲインをするも、林をはじめ、身体を張りながら得点を許さない日野のディフェンス。互いの意地の張り合いである。
が、無得点の攻防の中での初トライは意外な形からであった。
前半27分。自陣ゴール前ショートラインアウト(3名のみ並ぶ)から、NO8ニリがラインアウトの後方でボールをキャッチ、そこでいったんラックを作った。そこから改めてキックを蹴ろうとする戦法だ。が、SO山道翔が蹴ったボールを相手NO8がチャージ! 周りから「オフサイド!」の声も響き、一瞬動きが止まったように見えるプレーヤーたち。直後チャージされたボールをサニックスFLがキャッチし、そのまま倒れるようにインゴールへ。すかさずレフリーはトライを認める笛を吹いた。ゴールも決まり0対7。チャージされたボールの軌道に恵まれなかったのか、その後の反応の遅さが悪いのか。いずれにせよ得点されたことは認めなければならず、立て直さなければない。
が、日野は直後にもトライを許してしまう。日野のリスタートキックから相手陣22m付近で相手ボールのラック。ボールがラックから出ていたと見て飛び出した日野選手がオフサイドを宣せられる。直後、そばにいたヘスケスがクイックタップからしかけて前進、FW、BK合わせてパスを6回つないで70m以上を走られ、最後はSHにインゴールに飛び込まれてしまう。さらには0対14とされたその後の日野のリスタートキックキックからも、相手陣22m内からまたしてもヘスケスを中心に全員が走ってはパス、走ってはパスとボールを運ばれ、最後はボールをもらったロックがインゴールに飛び込んだ。その間つながれたパスは13回。決まれば屈辱のノーホイッスルトライである。前半、守りに守り続けていたディフェンスの壁が壊れたのか? このまま先週のコーラ戦と同じく大敗を喫するのか?
だが、コーナーポスト付近に飛び込んだトライに対しレフリーはTMOを要請。すると結果は相手のインゴールノックオンに。インゴールに飛び込むロックに絡みつき、ノックオンを誘ったのはNO8。悪い流れが来そうなところを断ち切ったのが大ベテランのニリだったのだ。
さらにはその流れを引き寄せるように、前半終了間際の39分に日野は敵陣ゴール前でのラインアウトモールからトライ。最後にボールをインゴールに着けたのもニリである。
その流れは後半も続く。キックオフから敵陣に入った日野は相手ボールのラックから、細谷監督に注目される中、6番FL真田の激しいカウンターラックからターンオーバー。その後ほとんどボールを支配しながら敵陣に居座り、9分にはまたしてもニリがインゴールに飛び込みトライ。
しかしこのトライは単にニリの力によるだけではない。敵陣ゴール前正面、10メートル辺りのマイボールスクラムから一端右に出たボールを、SH田川明洋が、逆サイドに立つSO山道にロングパス。そのボールが山道からCTB12番・林とクロスしながら入ってきた13番・園木に渡りゲイン。一度はタックルされながらも園木はボールを置いてすぐさま立ち上がりさらにゲインしてラック。今度はそこにFL真田が外側から良い角度でボールを受けてはブレイク、ゴール前1mまで迫ったのだ。そして、直後にNO8ニリがボールを拾ってインゴールにねじ込んでトライ! ゴールも決まって14対14の同点となった。若手とベテランが、つまりはチームがひとつとなった一連の流れであった。
試合はその後サニックスFBに走り切られてがトライを奪われ、最終的には19対14で敗戦となるも、この日は観客席から試合を見つめていたチームのキャプテン村田毅が言った。
「これでカップ戦は16位。記録としてはそう記されるでしょう。でも、今日の試合メンバーが80分間身体を張り続けたプレーは、目の前で見ている人の目に焼き付いているはず。ニリの素晴らしいリーダーシップ。それに応えた他のメンバーたち。きっと今日の試合は来年度につながるものだと思います」
日野レッドドルフィンズが初めて挑んだトップリーグでの戦いはすべてが終わった。この試合を最後にチームを去るメンバーもいる。しかも敗戦。それでもこの試合は、未来への大きな一歩となるに違いない。
細谷直監督 カップ戦は、若手やこれまで出場機会の少ない選手を主に使って挑んできました。ただゲームプランに関しては他のリーグ戦と特に変わりません。つまり、来年トップリーグで戦う上で、どこまで若手が力を発揮してくれるか。試合の勝敗という意味ではみな悔しい思いをしたかと思いますが、この敗戦が来年に向けて振り返る機会になると思います。
ニリ・ラトゥ ゲームキャプテン 今日は今年のチームの最後の試合。若いメンバーが多い中で、彼らはいいパフォーマンスをしてくれました。試合は負けましたけど、プレーヤーにとって、特に若手にとってはそういう体験は宿命でしょう。今日の試合に挑んだメンバーは、誇りを持って顔を上げて帰っていいはず。あとはこの経験を生かして成長していければよいと思います。