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インタビュー

ジャパントップリーグカップ戦プールA 第1回戦 パナソニックワイルドナイツ戦コラム

『いつも心に“日野ピクチャー”を』

 夢はどう実現するのか。米国駐在の時、バスケットボールNBAの神様、マイケル・ジョーダンに聞いたことがある。彼は「努力すれば、イメージがカラーになる」と言った。
 「最初、夢はぼんやりしていても、努力すれば、徐々にくっきり見えてくる。さらに努力すれば、白黒からカラーになる。もっと努力すれば、ある日、それが現実になるんだ」
 ことしの日野レッドドルフィンズのキーワードは『日野ピクチャー』である。細谷直監督が「この言葉をチームの中で浸透させていきたい」と強調した。
 「同じ絵を、選手とスタッフ、あるいは会社関係者を含めて、見ることができるかどうかというところが、大きな目標を達成するカギになると思うんです」
 いわば意思統一だろう。全員がどうやって勝負に勝つのかを理解し、結束し、動いていく。チームスローガンの『All for one』の「one」かもしれない。
 そういった意味で、トップリーグカップの開幕戦では、日野ピクチャーが見えた部分もあれば、ぼやけた部分もあった。わずか2点差。主将の村田毅は記者会見で、惜敗の率直な感想を聞かれると顔をゆがめた。
 「そりゃ、悔しい。めちゃくちゃ悔しい。めちゃくちゃ悔しいですね」
 最後はブレイクダウンでノット・リリース・ザ・ボールの反則をとられ、逆転勝利は消えた。では、2点差の敗因は。
 「ひとつ、このプレーというところではないと思います。最後のブレイクダウンでボールが出ていたらとか、“たら・れば”というよりか、全体を通してミスが多かったですね、うちのチームは。逆に、これだけ多くのミスをして、よくぞここまで追いつきかけたというのはありました」
 空は黒い雨雲が低く垂れこめ、どしゃぶりの雨が降っていた。どうしてもボールは滑りやすくなる。加えて、パナソニックの鋭いラッシュアップ・ディフェンスの圧力を受け、ハンドリングミスを誘発させられた。
 とくに立ち上がりだった。昨季TL6位とはいえ、常勝軍団だったパナソニックに対し、日野は昨季14位止まりで入れ替え戦の辛さまで味わっていた。細谷監督はこう、言葉を足した。
 「グラウンドの中でパナソニックという名前に押されていた選手がいたかもしれません」
 挑みかかる気概の強弱はとくにブレイクダウン、コンタクトエリアに出る。球際に出る。ミスはともかく、そのカバーリング、イーブンボールへの働きかけも半歩、遅れた。前半中盤までに4連続トライを奪われ、25点差をつけられた。
 ただ、ここでギブアップしなかった。経験値か。平均34歳の職人FWが軌道修正し、うまく立て直した。セットプレー、とくにラインアウトでは優位に立った。
 16年在籍したトヨタ自動車を退団し、日野に加入したロック北川俊澄も躍動した。元日本代表の38歳は「これから上昇していく魅力的なチーム」と日野を評した。
 「日野には、あんな悪い状況からでも立て直せる力がある。ベテランがいい感じで引っ張っているところもあるんでしょう。これからが楽しみです」
 日野の壮大なるチャレンジはつづく。昨季、チーム名から企業名を外し、「日野自動車」から「日野」になった。トップリーグ初めての出来事で地域密着を明確に打ち出した。さらには、スーパーラグビーの強豪クルセイダーズ(ニュージーランド)とパートナーシップ契約を結び、ゲームプランやメソッド、チーム運営全般を共有する。
 細谷監督がクルセイダーズとの連携のメリットを説明する。
 「ベースとして、クルセイダーズのアタックプランを参考にしながら、我々がそれにカスタマイズ(仕様変更)をかけている感じですかね」
 だからだろう、攻撃がより多彩になった。メリハリが効き、鋭さを増した。ただ、まだ新しい戦略を導入して2カ月。精度不足、連係不足は否めない。
 今年の目標はTLベスト8。このTLカップでは優勝を目指す。村田主将は言い切った。
 「日野ピクチャーを磨き続けていきたい」
 みんなが同じ日野ピクチャーを想いながら、日々の鍛錬に励めば、きっとカラフルな絵をイメージできるようになるだろう。

 ▽細谷直監督 ゲームの入りがよくなかった。そこに尽きると思います。ただ、トライ数は4本ずつ。後半は我々のプランをしっかりと遂行してくれた結果、パナソニックを0点に抑え、2点差までに追い上げられました。勝ち点1しかとれませんでしたけど、残り試合をしっかり戦っていけば、数字上は、1位通過もできると思います。

 ▽村田毅主将 昨年のトップリーグでは散々負けましたけど、その時と今日の敗戦は違う意味合いを持つのかなと思います。自分たちのやってきた道は間違ってないと感じています。課題はありますが、チームで同じ日野ピクチャーを見て、機能したときには通用する手ごたえを感じました。

Text by 松瀬学

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