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【ジャパンラグビートップリーグ】第1節試合コラム『「WE」の戦い、始まる』
熱気再び。「ヒノ、ヒノ、ヒーノ。ガンバレ、ヒーノ」。1万7千人が集まった秩父宮ラグビー場に大きな声が響いた。その声援に背中を押された日野レッドドルフィンズの選手がグラウンドで躍動した。
「泣きそうになりました」と、ロックの村田毅・共同主将は漏らした。もちろん、ラグビーワールドカップの盛り上がりのお陰もあるだろう、いまや空前のラグビーブームの中にある。なんといっても、選手にとって、ファンの熱気が一番のモチベーションになる。
「お客さんが多くて、いろんな人が声をかけてくれるので、ラグビー選手として、ああ、しあわせだなって。プレーしながら、いい開幕戦やっているなと思いましたよ」
初昇格の昨季14位の日野だが、効果的な補強もなされ、昨季5位のNTTコミュニケーションズと互角の戦いを繰り広げた。ラスト3分、相手の金正奎主将にインターセプトを許すまで、勝負はどちらに転ぶかわからなかった。試合後のミックスゾーン。インタビュー中の村田のうしろを金正奎が通った。
金正奎が笑顔で明るく声をかけた。
「サンキュー、サンキュー」
村田が冗談口調で「うるさいなあ」と返した。「でも」と言葉を足した。
「楽しかったな」
「ほんと、楽しかった」
いい光景だった。ラグビーは激しいスポーツだ。でも、ベストを尽くし終えた瞬間に敵味方がひとつの人間愛に包まれていく。いわば「ノーサイド精神」か。たぶん、村田の心中には「自分たちの力を出し切った」との充実感が幾ばくか、あったのだろう。
プレシーズンの練習試合の成績は散々だった。NTTコミュニケーションズ(昨年12月7日)に12-73で大敗し、東芝(同12月14日)にも33-69で敗れた。とくにコンタクトエリアで圧倒された。どんないいシステムがあっても、ここで負けたら話にならない。その後の練習では、「ドミネート・コンタクト」「アグレッシブ・ディフェンス」を徹底してきた。
その成果が試合に出た。W杯日本代表の核弾頭、アナマキ・レレイ・マフィにも、南ア代表のマルコム・マークスにも厳しいタックルを浴びせ、大幅ゲインは許さなかった。ゴール前のからだを張ったディフェンスは見ていて、心を揺さぶられた。
結局、勝負を分けたのは、ラスト3分の相手のインターセプトだった。そのパスを投げた共同主将のSHオーガスティン・プルは会見でこう話し、責任を痛感していた。
「すごく悔しかったし、一緒にハードワークしてきたチームメイトに非常に申し訳ないと思った」
だが、そのパスが通っていれば、大きなチャンスになった。敵陣に入り、逆転PG、あるいは逆転トライにつながる可能性もあった。
細谷直監督は「ディフェンスにギャップがあることを想定してプルは投げたんだと思います」と理解を示した。
「別にミスにつながりましたが、前半、ゴールライン際で最後に追いついたのも、ゴール前で釘付けになった時、相手からターンオーバーしたのもプルでした。ひとつのプレーではなく、試合のトータルで彼の存在は大きかった。次に期待です」
ひとつの失敗が、ひとつの敗戦が、チームの成長を促すことになる。今季のチームスローガンが「WE」である。「Winning Environment」(勝つ環境)の略で、選手たちの行動指針みたいなものだろう。みんなで同じ絵をみる「日野ピクチャー」同様、勝つためのチームカルチャーをつくりあげようといった趣旨である。
もちろん、WEは「私たち」といった意味も。I(私)ではなく、WE。ファンの方々も含めた「ワンチーム」を意味する。あたたかい日野応援団の拍手の中、日野レッドドルフィンズの2季目のトップリーグ挑戦がはじまった。
(by 松瀬学)
「泣きそうになりました」と、ロックの村田毅・共同主将は漏らした。もちろん、ラグビーワールドカップの盛り上がりのお陰もあるだろう、いまや空前のラグビーブームの中にある。なんといっても、選手にとって、ファンの熱気が一番のモチベーションになる。
「お客さんが多くて、いろんな人が声をかけてくれるので、ラグビー選手として、ああ、しあわせだなって。プレーしながら、いい開幕戦やっているなと思いましたよ」
初昇格の昨季14位の日野だが、効果的な補強もなされ、昨季5位のNTTコミュニケーションズと互角の戦いを繰り広げた。ラスト3分、相手の金正奎主将にインターセプトを許すまで、勝負はどちらに転ぶかわからなかった。試合後のミックスゾーン。インタビュー中の村田のうしろを金正奎が通った。
金正奎が笑顔で明るく声をかけた。
「サンキュー、サンキュー」
村田が冗談口調で「うるさいなあ」と返した。「でも」と言葉を足した。
「楽しかったな」
「ほんと、楽しかった」
いい光景だった。ラグビーは激しいスポーツだ。でも、ベストを尽くし終えた瞬間に敵味方がひとつの人間愛に包まれていく。いわば「ノーサイド精神」か。たぶん、村田の心中には「自分たちの力を出し切った」との充実感が幾ばくか、あったのだろう。
プレシーズンの練習試合の成績は散々だった。NTTコミュニケーションズ(昨年12月7日)に12-73で大敗し、東芝(同12月14日)にも33-69で敗れた。とくにコンタクトエリアで圧倒された。どんないいシステムがあっても、ここで負けたら話にならない。その後の練習では、「ドミネート・コンタクト」「アグレッシブ・ディフェンス」を徹底してきた。
その成果が試合に出た。W杯日本代表の核弾頭、アナマキ・レレイ・マフィにも、南ア代表のマルコム・マークスにも厳しいタックルを浴びせ、大幅ゲインは許さなかった。ゴール前のからだを張ったディフェンスは見ていて、心を揺さぶられた。
結局、勝負を分けたのは、ラスト3分の相手のインターセプトだった。そのパスを投げた共同主将のSHオーガスティン・プルは会見でこう話し、責任を痛感していた。
「すごく悔しかったし、一緒にハードワークしてきたチームメイトに非常に申し訳ないと思った」
だが、そのパスが通っていれば、大きなチャンスになった。敵陣に入り、逆転PG、あるいは逆転トライにつながる可能性もあった。
細谷直監督は「ディフェンスにギャップがあることを想定してプルは投げたんだと思います」と理解を示した。
「別にミスにつながりましたが、前半、ゴールライン際で最後に追いついたのも、ゴール前で釘付けになった時、相手からターンオーバーしたのもプルでした。ひとつのプレーではなく、試合のトータルで彼の存在は大きかった。次に期待です」
ひとつの失敗が、ひとつの敗戦が、チームの成長を促すことになる。今季のチームスローガンが「WE」である。「Winning Environment」(勝つ環境)の略で、選手たちの行動指針みたいなものだろう。みんなで同じ絵をみる「日野ピクチャー」同様、勝つためのチームカルチャーをつくりあげようといった趣旨である。
もちろん、WEは「私たち」といった意味も。I(私)ではなく、WE。ファンの方々も含めた「ワンチーム」を意味する。あたたかい日野応援団の拍手の中、日野レッドドルフィンズの2季目のトップリーグ挑戦がはじまった。
(by 松瀬学)