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【ジャパンラグビートップリーグ】第2節試合コラム『しあわせなチーム初勝利』

 ラグビーっていいな、日野っていいな、とつくづく感じる。寒風吹きすさぶ花園ラグビー場。「マン・オブ・ザ・マッチ」に選ばれた日野のプル共同主将は笑顔だった。
 「安心しました」。2戦目にして今季初勝利。責任感のつよいプル共同主将はそう、漏らした。開幕のNTTコミュニケーションズ戦では敗戦を決定づけるインターセプトを許していたからだろう、安どの表情を浮かべた。
 「ワタシの事を(細谷直)監督は信頼してくれているのに、(開幕戦では)すごくがっかりさせてしまった。勝てる試合を落とした。今日は、自分たちのできるパフォーマンスをシンプルにやり切ろうと考えていた」
 30歳のプル共同主将はからだを張った。切れ味鋭どいランで何度もゲインし、厳しいタックルを再三、相手に浴びせ続けた。とくにゴール前だった。ラスト5分、自陣ゴール前のピンチではジャッカルを決め、相手のペナルティーをもぎとった。
 「ナイス・ジャッカル!」と声をかけると、プルは「あれはフォワードのお陰」と言った。
 「フォワードがハードワークして止めてくれたお陰だった。あのシチュエーション、“ビッグ・ロック”のキタ(北川俊澄)がチョップで相手の下に入って一発で倒してくれた。だから、僕はボールをとることができた。(ピンチを脱した)その瞬間、“フォワード、ありがとう”と思ったよ」
 日野はいろんなチームから集まってきた選手が多い。いわゆるダイバーシティ(多様性)の典型のようなチームだ。「ワンチーム」になるのは難しいけれど、ふだんのハードワークと切磋琢磨(せっさたくま)を経て、「徐々に同じ絵を見ることができるようになってきた」(細谷直監督)。同じ絵とは、ゲームプラン、チーム文化を指すのだろう。
 NEC戦初勝利も、この1週間、試合に出られないノン・メンバーが練習の「アタック・ディフェンス」などで激しいプレッシャーをかけてくれたからである。勝利のため、チーム全員がひとつになる。それがラグビー。
 勝負のアヤとなった後半5分の相手ボールのスクラム。日野はシンビン(10分間の出場停止)のため、ひとり少ない7人でスクラムを組んだ。でも、このスクラムをぐいと押し込んで相手のコラプシング(故意に崩す行為)の反則をもぎとった。
 左プロップの久富の円熟のワザが光った。その41歳の述懐。
「その瞬間、自分以上に、恭佑(堀江)や周りの選手がすごく喜んでくれた。それを見るのがうれしかったですね」
 実はハーフタイムで、久富は加藤真也レフリーに確認していた。自分は止まろうとしているのにスクラムがなかなか止まらない。どうすれば、スクラムが崩れないのか、と。つまりは、レフリーとのコミュニケーションは大事なのだった。
久富は年齢を感じさせないハードワークでディフェンスでも地味にがんばった。ラスト5分で交代で退場。「まだまだ」と言った。
「途中で代えられたのは悔しいですね。試合に出ている限りは、いつも最後までプレーしたい気持ちでやっていますから」
関東から遠く離れた大阪の花園ラグビー場にも、多くの日野ファンが駆け付けてくれた。試合後、日野の選手たちはバックスタンドの前に走って行って頭を深々と下げた。「ありがと~」の声が飛ぶ。
村田毅共同主将はうれしそうな表情をつくった。しみじみとこう、漏らした。
「負けて“がんばって~”と言われるのが多かったですが、やっぱり勝って“ありがと~”と言われるのは、プレーヤーとして一番しあわせな瞬間ですよね」
試合の夜、メールが一本届いた。公式戦初出場したCTBの東郷太朗丸の父からだった。昔からの知人なのだ。息子が、がんばって、がんばって、やっとでつかんだ出場だった。メールには最後、こう書かれていた。

<人生に夢があるのではない
    夢が人生をつくるのだ
 ラグビーがあって幸せになれました>

(By 松瀬学)

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