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【ジャパンラグビートップリーグ】第3節試合コラム『自信のスクラム、42歳PR久富のプライド』

スクラムは日野レッドドルフィンズの“心臓”だ。プライドだ。日本代表FWのレジェンド、日野の箕内拓郎ヘッドコーチは穏やかな口調で言った。「スクラムでは相手にプレッシャーをかけることができました」と。

 相手は、2018年度シーズンの王者、神戸製鋼だった。日野にとっては初舞台となる敵地・神戸総合運動公園ユニバー記念競技場。きれいな緑の芝のフィールドで組まれたスクラムは相手ボールが4本、マイボールは14本。うち、日野は4回(神鋼は1回)、相手のコラプシング(故意に崩す行為)の反則を奪った。つまり、押し勝った。

 「タケシ~」。試合前の直前練習中、スタンドの神鋼控え選手から掛け声が何度か響いた。そう、日野の今季初先発のフッカー、木津武士に対する声援だった。木津は2017年度シーズンまで神鋼所属、かつてのチームメイトからのエールだった。

 試合が始まる。スクラムで何度かの組み直し。「落としとんちゃうか」「お前らの得意なやつや」。その度、愉快なフロントロー同士の声が飛び交う。攻撃ならぬ、“口撃”合戦だ。たぶん、そんなやりとりがあっただろう。

 日野のフロントローは好漢がならぶ。左プロップはトップリーグ最年長先発記録を更新中の42歳、「ドミさん」こと、久富雄一だ。今季は3試合すべてで先発し、目下、トップリーグ通算出場が「163試合」。本人は気に留めていないだろうが、かつてNECで一緒に戦った箕内ヘッドコーチは「若い選手からも、外国人選手からも、リスペクトをもらっている」と人間性も称える。

 「年齢はただの数字でしかないということを証明してくれています。彼の取り組みは真面目で、今でも練習中のGPS(全地球測位システム)端末の数値を更新したりしています。年齢を理由に(チームから)外すことはできないですから」

 そういったハードワークをいとわないタイプの選手なのだ。日本代表で21キャップ。NECからNTTドコモを経て、2017年シーズン、日野に移籍してきた。豊富な経験と技術でスクラムを支える大黒柱。この日も、スクラムではいぶし銀の光を放ち、ひたむきに走り、地味ながらも鋭いタックルを見せ、黙々とブレイクダウンに突っ込んだ。

 右プロップが、今季加入の南アフリカ出身のデイヤン・ファンダーウエストハイゼン。26歳。U20・高校南アフリカ代表の経歴を持ち、スーパーラグビーのクラブで活躍してきた。スクラムが滅法強い。そう、見えた。

 この日、後半15分で、フロントロー陣は石橋尚哉、郷雄貴、村上玲央にそろって交代した。代わっても、神鋼スクラムを押した。2年目の24歳、石橋はトップリーグ・デビューとなった。

 スクラムはもちろん、フロントロー3人だけで組むものではない。うしろ5人(ロック、フランカー、ナンバー8)の押しも大事である。チームの結束の象徴といってもいい。

 この日の反省は、前半28分あたりのセンタースクラムだった。相手ボール。タイミングが合わず、神鋼にコラプシングをとられた。ナンバー8の堀江恭佑・共同主将がこう、反省する。「相手が8人で集中してプッシュしてきているのに、こちらは8人が結束して押すという気持ちでなかった」と。

 日野は開幕3連戦ともスクラムでは互角以上に戦った。武器になる。このスクラムの押しをどう攻めの勢いにつなげるのか。どうトライに結び付けるのか、である。

 ノーサイド。緑の芝のフィールドの中で、日野フィフティーンは円陣を組んだ。紺色のセカンドジャージの輪が縮まった。堀江・共同主将が声を発した。何と言ったのか?

 「スコアは開いたけれど、手ごたえをつかめた部分もある。自分たちがやってきて、ゲームで出せた部分もある。チームの初勝利に向け、また1週間、しっかり準備していこう。そんな話をしました」

 そうだ。挑戦者は、前を向こう。

(Text by 松瀬学)

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