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【ジャパンラグビートップリーグ】トーナメント第1回戦試合コラム『タケが公式戦初の4トライで面目躍如』

 トライは15人でするものだが、やはり最後のフィニッシャーがいないと話にならない。公式戦初の4トライ。日野レッドドルフィンズのウイング竹澤正祥が“フラッシュ”のごとく光り輝いた。

 「よかったなあ、と思います」。チーム3年目の25歳が甘いマスクを少し崩した。

 「過去の試合で、(4トライは)なかったので…。1週間、自分たちで想定してきた前半20分の試合ができなかった。途中から修正できて、ホッとしています」

 負けたら終わりのプレーオフトーナメント1回戦。相手が下位のリーグのチームとはいえ、だれもが緊張する。小雨の影響もあったのだろうか、ハンドリングミスが相次ぎ、日野は後手を踏んだ。前半の中盤まで、15点を先行されてしまった。

 でも、FWが奮起する。前半28分。リスタートのキックオフのこぼれ球をフッカー郷雄貴が捕って突進する。ラックをつくって、左サイドをプロップのファンダーウエストハイゼンが突いて、またラック。左オープンに一気に回し、フルバックの川井太貴からオフロードパスをもらった竹澤が空いた左ライン際のスペースを駆け抜けた。

 このトライが反撃開始の合図だった。5分後、敵陣深く入り、モールのサイドをSHオーガスティン・プルが持ち出してディフェンスを引き付け、おとり役の1人を飛ばしてライン際の竹澤へつなぎ、そのまま左隅に飛び込んだ。これで2つ目。

 1点差に詰め寄った後半7分、日野は相手のハンドリングミスからチャンスをつかみ、左オープン展開でSOクリップスからクイックでもらった竹澤が左隅にスライディングしながら逆転トライした。これで3つ目。日野は24-20と逆転した。

 試合後のオンライン会見。逆転トライのシーンを聞かれると、竹澤は「まず点数を取ることを意識していました」と言った。実直、誠実、言葉に謙虚さがにじむ。
 「練習でやってきたことがそのまま出たトライだった。自分が何かをしたというより、チームでやると決めたことがやれたトライでした。仲間がつないでくれたボールは必ず、トライをとるつもりでやっています」

 さらに後半12分。敵陣深くのラックから左オープンにクイックで回し、フランカーの堀江恭佑からのワンバウンドパスをうまく捕って、またまた左隅に飛び込んだ。これで4つ目のトライ。今シーズンはこれまでトップリーグ6試合で1トライしか記録していなかったが、一挙に4本も挙げてしまった。

 竹澤の隣に座る箕内拓郎ヘッドコーチが「タケ(竹澤)に関しては」と漏らして、冗談口調でつづけた。
 「そうですね。今シーズン、あまりトライしたところを見たことがなかったので、ここで“キタ”のかなと。いつも、試合前には言うんですよ、“今日は何本トライとってきます。それがウイングの仕事です”って。それが今日、4回も見られるとは。いい経験をさせてもらいました」

 トップリーグ3年目の竹澤は群馬・明和県央高から日大に進み、日野自動車に入社した。中長期商品戦略部所属。1年目から公式戦に出場し、着実に成長してきた。高校時代はフランカーだったこともあり、強靭な足腰を生かした力強いランを持ち味とする。

 このところスピードにもキレが加わった。成長した部分を問えば、竹澤はしばし、考えた後、こう口を開いた。
 「外側からボールを呼び込むコーリングであったり、オーガナイズであったり、自分でできていなかった部分がよくなってきたと思います」
では課題は。
 「キックの部分がことし1年、やってきたところです。もっと相手の裏のスペースをよく見て、突いていきたい」

 語尾に力がこもった。次は、強豪トヨタ自動車戦。この日の4トライを自信とし、タケが秩父宮ラグビー場を駆け回る。

(Text By 松瀬学)
 

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