『「自分たちのラグビー」で逆転勝ち、1回戦』
自分たちのラグビー。
好きな言葉だ。試合後、「自分たちのラグビーをしようとしたことで、流れを変えられました」と日野レッドドルフィンズの箕内拓郎ヘッドコーチは言った。
自分たちのラグビーとは、つまりチームが立ち返る場所を示している。そこに戻りさえすれば、自分たちらしいラグビーができる。結束のスクラム、一歩踏み出す気概、激しく前に出る組織ディフェンス。日野は後半、それでやっとこさ、清水建設を逆転した。
京都の西、西京極のたけびしスタジアム京都。強風が吹き荒れる。時折、雨がぱらつくヘンテコな天気だった。6点差を追う後半のキックオフ直後。フッカー郷雄貴が猛然と前に出て、相手キックを好チャージした。
敵陣深く攻め込み、相手ボールのドロップアウトキックに移った。これをナンバー8のニリ・ラトゥが捕球してまっすぐ前に出る。“トン、トン、トン、トン、ヒノの二トン”と、ひとり、ふたりと弾き飛ばした。
ラックから右へ。スクラムハーフのオーガスティン・プルが右斜めに引っ張り、背後のスタンドオフのクリップス・ヘイデンにノールックのフリップパス。うまい! クリップスがそのまま右中間に飛び込んだ。1点差。
その4分後、こんどはセンターの松井佑太がナイスチャージし、またも敵陣深く攻め込んだ。清水建設ボール。プレッシャーをかけて落球を誘い、クリップスがうまく拾い、ラックをつくって、左オープンに素早く展開。センターのトンガモセセからクリップス、そしてウイングの竹澤正祥と回し、左隅に飛び込んだ。24-20と逆転した。竹澤はこの日、3本目のハットトリックだった。
もう、やめられない~♪、とまらない~♪。その4分後、自陣ゴール前のピンチでのラトゥの猛タックルから逆襲し、ラックから左オープンに回してフランカーの堀江恭佑のワンバウンドのパスを竹澤がうまく捕って、左隅にトライした。なんと竹澤、この日、4本目のトライなのだ。
その後、3トライを加えて、終わってみれば、日野の大勝となった。後半のスコアは34-0。とくに相手をノートライに抑えたことが評価できる。ノーサイド寸前、日野は自陣ゴール前のピンチがつづいた。
ここで、後半途中から入った吉川遼が値千金のジャッカル。ラトゥが二トン級の猛タックル。途中から交代したフッカー木津武士もナイス・セービング。みな、からだを張った。「自分たちのラグビー」とは、ラグビーそのものではなく、チームを信じる心の動きを表現しているのだった。
それにしても、である。前週のリコー戦敗戦の影響か、格下相手への油断か、はたまた負けたら終わりの一発勝負の緊張か。ハンドリングミス、キックミス、ペナルティーを続発させて、清水建設にペースを渡した。前半中盤までは0-15とリードを許してい
白状すれば、これで最後のトップリーグの日野のシーズンも終わるのかな、なんて不安も一瞬、頭をよぎった。どっこい、日野にはトップリーグの意地とプライドがあった。日々の鍛錬でコツコツと築きあげてきた「自分たちのラグビー」があった。
ノーサイド。日野に安どの笑顔が広がる。プロップの好漢、浅原拓真は、かつての東芝の同僚、清水建設のコンラッド・バンワイクと笑顔をぶつけあっていた。試合が終われば、みな仲間。ラグビーらしい光景だった。
ふと雨雲の晴れ間をみれば、遠くの愛宕山のあたりにキレイな二重の虹がかかっていた。日野にとっては、2回戦にかかる「ダブル・レインボー」、良いことの起こる前兆といわれる吉兆の虹に見えたのだった。
【HC、主将の言葉】
箕内拓郎ヘッドコーチ
後半のパフォーマンスには満足していますけど、前半の出来は十分ではなかったですね。前半を見ると、今日でシーズンが終わってしまうのじゃないかというプレッシャーが選手にあったのではないかという気がします。(来週のトヨタ自動車戦)我々の強みを狙って、しっかり準備をしたいなと思います。
オーガスティン・プル共同主将
前半は大きな問題でした。後半のようなプレーが前半からできていれば…。(ハーフタイムでは)細かいところの精度を上げていこうと話をしました。またボールキャリーをハードに、ブレイクダウンのクリーンもハードにするよう意識しました。来週は、フォ、みんなの精度を上げていきたい
(Text By 松瀬
好きな言葉だ。試合後、「自分たちのラグビーをしようとしたことで、流れを変えられました」と日野レッドドルフィンズの箕内拓郎ヘッドコーチは言った。
自分たちのラグビーとは、つまりチームが立ち返る場所を示している。そこに戻りさえすれば、自分たちらしいラグビーができる。結束のスクラム、一歩踏み出す気概、激しく前に出る組織ディフェンス。日野は後半、それでやっとこさ、清水建設を逆転した。
京都の西、西京極のたけびしスタジアム京都。強風が吹き荒れる。時折、雨がぱらつくヘンテコな天気だった。6点差を追う後半のキックオフ直後。フッカー郷雄貴が猛然と前に出て、相手キックを好チャージした。
敵陣深く攻め込み、相手ボールのドロップアウトキックに移った。これをナンバー8のニリ・ラトゥが捕球してまっすぐ前に出る。“トン、トン、トン、トン、ヒノの二トン”と、ひとり、ふたりと弾き飛ばした。
ラックから右へ。スクラムハーフのオーガスティン・プルが右斜めに引っ張り、背後のスタンドオフのクリップス・ヘイデンにノールックのフリップパス。うまい! クリップスがそのまま右中間に飛び込んだ。1点差。
その4分後、こんどはセンターの松井佑太がナイスチャージし、またも敵陣深く攻め込んだ。清水建設ボール。プレッシャーをかけて落球を誘い、クリップスがうまく拾い、ラックをつくって、左オープンに素早く展開。センターのトンガモセセからクリップス、そしてウイングの竹澤正祥と回し、左隅に飛び込んだ。24-20と逆転した。竹澤はこの日、3本目のハットトリックだった。
もう、やめられない~♪、とまらない~♪。その4分後、自陣ゴール前のピンチでのラトゥの猛タックルから逆襲し、ラックから左オープンに回してフランカーの堀江恭佑のワンバウンドのパスを竹澤がうまく捕って、左隅にトライした。なんと竹澤、この日、4本目のトライなのだ。
その後、3トライを加えて、終わってみれば、日野の大勝となった。後半のスコアは34-0。とくに相手をノートライに抑えたことが評価できる。ノーサイド寸前、日野は自陣ゴール前のピンチがつづいた。
ここで、後半途中から入った吉川遼が値千金のジャッカル。ラトゥが二トン級の猛タックル。途中から交代したフッカー木津武士もナイス・セービング。みな、からだを張った。「自分たちのラグビー」とは、ラグビーそのものではなく、チームを信じる心の動きを表現しているのだった。
それにしても、である。前週のリコー戦敗戦の影響か、格下相手への油断か、はたまた負けたら終わりの一発勝負の緊張か。ハンドリングミス、キックミス、ペナルティーを続発させて、清水建設にペースを渡した。前半中盤までは0-15とリードを許してい
白状すれば、これで最後のトップリーグの日野のシーズンも終わるのかな、なんて不安も一瞬、頭をよぎった。どっこい、日野にはトップリーグの意地とプライドがあった。日々の鍛錬でコツコツと築きあげてきた「自分たちのラグビー」があった。
ノーサイド。日野に安どの笑顔が広がる。プロップの好漢、浅原拓真は、かつての東芝の同僚、清水建設のコンラッド・バンワイクと笑顔をぶつけあっていた。試合が終われば、みな仲間。ラグビーらしい光景だった。
ふと雨雲の晴れ間をみれば、遠くの愛宕山のあたりにキレイな二重の虹がかかっていた。日野にとっては、2回戦にかかる「ダブル・レインボー」、良いことの起こる前兆といわれる吉兆の虹に見えたのだった。
【HC、主将の言葉】
箕内拓郎ヘッドコーチ
後半のパフォーマンスには満足していますけど、前半の出来は十分ではなかったですね。前半を見ると、今日でシーズンが終わってしまうのじゃないかというプレッシャーが選手にあったのではないかという気がします。(来週のトヨタ自動車戦)我々の強みを狙って、しっかり準備をしたいなと思います。
オーガスティン・プル共同主将
前半は大きな問題でした。後半のようなプレーが前半からできていれば…。(ハーフタイムでは)細かいところの精度を上げていこうと話をしました。またボールキャリーをハードに、ブレイクダウンのクリーンもハードにするよう意識しました。来週は、フォ、みんなの精度を上げていきたい
(Text By 松瀬