『チーム一丸のラストゲーム』
経験豊富なベテラン選手の意地と、若手の意気がひとつとなった。まさにチーム一丸。敗れはしたものの、日野レッドドルフィンズは「グッド・チャレンジャー」だった。
緊急事態宣言が出されたけれど、日曜日の秩父宮ラグビー場のスタンドには日野ファンが駆け付けた。入場制限下の3849人(公式記録)。熱いファンの拍手を受け、日野はもちろん、トヨタ自動車に勝ちにいった。
キックオフ直後、日野のFB川井太貴が続けてチャージを食らう。嫌な空気だったが、“チャンスに強い”、WTBチャンス・ペニーが流れを変えた。前半4分。トヨタが左ラインに回る。ハーフウェーライン付近で、ペニーがこれをインターセプト。快足を飛ばして、そのままインゴールに走り込んだ。
先制トライだ。ゴールも決まり、7-0とリードした。あとは激しいぶつかり合いが続く。日野はスクラム、ラインアウトで優位に立ち、バックスもアグレッシブに攻め続けた。激しく前に出る組織ディフェンスも機能した。
ただ気負ってか、ペナルティーが窮地を招く。前半15分、20分、27分と、いずれもペナルティーからタッチに蹴り出され、ラインアウトからのトヨタの攻めに3連続トライを許してしまった。
勝負のアヤとなったが、前半終了間際の攻防だった。日野が自陣でペナルティーキックをもらったところで、前半終了のホーンが鳴った。これで前半を終えるか、と思ったところ、タッチに蹴り出して、日野はトライを狙いにいった。
チャレンジだ。ラインアウトからのドライビングモールを押し込んで、日野は連続攻撃を仕掛けた。SHオーガスティン・プルがサイドを突いて、FB川井がタテを突く。ラックサイドを、ナンバー8の千布亮輔、プロップのファンダーウエストハイゼン、ロックのクリシュナンがたて続けに突く。ゴールラインまであと数十センチ。最後はロックのリアキ・モリがノットリリース・ザ・ボールの反則をとられた。惜しい。残念無念。10-21で前半を折り返した。
後半序盤、トヨタにトライを奪われた。差を18点にひろげられた。それにしても、トヨタにはニュージーランド代表127キャップの至宝、ナンバー8のキアラン・リード、豪州代表105キャップの“ジャッカルの鬼”、フランカーのマイケルフーパ―がいた。相手にとっては不足なし、である。
後半10分。日野も負けじと、今季限りの引退を表明していた日本代表43キャップのロック、北川俊澄が交代出場した。あたたかい拍手がスタンドから送られた。
エナジーが加わったのか、日野が反撃に転じだ。徹底して攻めに攻める。後半19分。敵陣ゴール前のラインアウトからモールを押し込んで、右に回す。
フランカーのニリ・ラトゥが、プロップのファンダーウエストハイゼンが、ラックサイドをどんと突く。センターのトンガモセセがタテに切れ込んだ。サポートしたSHプルが相手に奪われそうになったボールを粘って持って、右ライン際のWTBペニーにつならのゴールをSO東郷太郎丸が蹴り込んで、11点差と追い上げた。
さらに4分後、WTB竹澤正祥が“ナイス・タックル”を相手に食らわす。PKをタッチに蹴り出し、ラインアウトからのモールをぐいぐい押し込んで、SHプルが右サイドに少し引っ張り、FB川井が鋭いアングルチェンジで切れ込んできた。好ステップでトだ。ゴールも決まって、24-28と4点差に詰め寄った。
だが…。ラスト15分、プレッシャー下で細かいミスが出る。ディフェンスもずれた。地力の差か。ここから、トヨタに3連続トライを奪われ、勝敗の帰趨は決した。
でも、どっこい日野には意地が残っていた。試合終了のホーンが鳴った後、PKをタッチに蹴り出した。このラインアウトを、北川がビューティフルな“ラグビー人生のラスト・キャッチ”。「トントントントン、ヒノの二トン」と、モールを押し込んで、最後えた。
まさにチーム一丸のトライだった。粋な計らいで、このゴールキックを、引退する北川が“グッバイ・キック”だ。右に大きく外れたけれど、北川も、他の日野選手も、顔をくしゃくしゃにしていた。
力を出し切った選手たちならではの笑顔の渦だった。この健闘はきっと、新リーグ発足となる来シーズンにつながるはずである。
【HC、主将の言葉】
箕内拓郎ヘッドコーチ
勝つための準備をして臨んだので、結果は非常に残念です。ただ、1年を通じて、苦しいところからスタートした選手たちがやってきたプロセスには満足しています。試合で、いくつか、いい部分も出ました。50分、60分までは、狙い通りの展開だったのかなンドでしっかり体現してくれたと思います。
オーガスティン・プル共同主将
キャプテンとして、全員のパフォーマンスには感謝しています。皆様にも感謝しています。私たちはすべてを出し切りました。ファイティングスピリットを80分間、全員で出し切ろうと話をしてきました。それができた。もちろん、結果は残念ですが、私たちは
(Text by 松瀬学)
緊急事態宣言が出されたけれど、日曜日の秩父宮ラグビー場のスタンドには日野ファンが駆け付けた。入場制限下の3849人(公式記録)。熱いファンの拍手を受け、日野はもちろん、トヨタ自動車に勝ちにいった。
キックオフ直後、日野のFB川井太貴が続けてチャージを食らう。嫌な空気だったが、“チャンスに強い”、WTBチャンス・ペニーが流れを変えた。前半4分。トヨタが左ラインに回る。ハーフウェーライン付近で、ペニーがこれをインターセプト。快足を飛ばして、そのままインゴールに走り込んだ。
先制トライだ。ゴールも決まり、7-0とリードした。あとは激しいぶつかり合いが続く。日野はスクラム、ラインアウトで優位に立ち、バックスもアグレッシブに攻め続けた。激しく前に出る組織ディフェンスも機能した。
ただ気負ってか、ペナルティーが窮地を招く。前半15分、20分、27分と、いずれもペナルティーからタッチに蹴り出され、ラインアウトからのトヨタの攻めに3連続トライを許してしまった。
勝負のアヤとなったが、前半終了間際の攻防だった。日野が自陣でペナルティーキックをもらったところで、前半終了のホーンが鳴った。これで前半を終えるか、と思ったところ、タッチに蹴り出して、日野はトライを狙いにいった。
チャレンジだ。ラインアウトからのドライビングモールを押し込んで、日野は連続攻撃を仕掛けた。SHオーガスティン・プルがサイドを突いて、FB川井がタテを突く。ラックサイドを、ナンバー8の千布亮輔、プロップのファンダーウエストハイゼン、ロックのクリシュナンがたて続けに突く。ゴールラインまであと数十センチ。最後はロックのリアキ・モリがノットリリース・ザ・ボールの反則をとられた。惜しい。残念無念。10-21で前半を折り返した。
後半序盤、トヨタにトライを奪われた。差を18点にひろげられた。それにしても、トヨタにはニュージーランド代表127キャップの至宝、ナンバー8のキアラン・リード、豪州代表105キャップの“ジャッカルの鬼”、フランカーのマイケルフーパ―がいた。相手にとっては不足なし、である。
後半10分。日野も負けじと、今季限りの引退を表明していた日本代表43キャップのロック、北川俊澄が交代出場した。あたたかい拍手がスタンドから送られた。
エナジーが加わったのか、日野が反撃に転じだ。徹底して攻めに攻める。後半19分。敵陣ゴール前のラインアウトからモールを押し込んで、右に回す。
フランカーのニリ・ラトゥが、プロップのファンダーウエストハイゼンが、ラックサイドをどんと突く。センターのトンガモセセがタテに切れ込んだ。サポートしたSHプルが相手に奪われそうになったボールを粘って持って、右ライン際のWTBペニーにつならのゴールをSO東郷太郎丸が蹴り込んで、11点差と追い上げた。
さらに4分後、WTB竹澤正祥が“ナイス・タックル”を相手に食らわす。PKをタッチに蹴り出し、ラインアウトからのモールをぐいぐい押し込んで、SHプルが右サイドに少し引っ張り、FB川井が鋭いアングルチェンジで切れ込んできた。好ステップでトだ。ゴールも決まって、24-28と4点差に詰め寄った。
だが…。ラスト15分、プレッシャー下で細かいミスが出る。ディフェンスもずれた。地力の差か。ここから、トヨタに3連続トライを奪われ、勝敗の帰趨は決した。
でも、どっこい日野には意地が残っていた。試合終了のホーンが鳴った後、PKをタッチに蹴り出した。このラインアウトを、北川がビューティフルな“ラグビー人生のラスト・キャッチ”。「トントントントン、ヒノの二トン」と、モールを押し込んで、最後えた。
まさにチーム一丸のトライだった。粋な計らいで、このゴールキックを、引退する北川が“グッバイ・キック”だ。右に大きく外れたけれど、北川も、他の日野選手も、顔をくしゃくしゃにしていた。
力を出し切った選手たちならではの笑顔の渦だった。この健闘はきっと、新リーグ発足となる来シーズンにつながるはずである。
【HC、主将の言葉】
箕内拓郎ヘッドコーチ
勝つための準備をして臨んだので、結果は非常に残念です。ただ、1年を通じて、苦しいところからスタートした選手たちがやってきたプロセスには満足しています。試合で、いくつか、いい部分も出ました。50分、60分までは、狙い通りの展開だったのかなンドでしっかり体現してくれたと思います。
オーガスティン・プル共同主将
キャプテンとして、全員のパフォーマンスには感謝しています。皆様にも感謝しています。私たちはすべてを出し切りました。ファイティングスピリットを80分間、全員で出し切ろうと話をしてきました。それができた。もちろん、結果は残念ですが、私たちは
(Text by 松瀬学)